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THE WORLD  作者: SEASONS
5月13日
4149/4820

相談できる人

…はぁ。



一体、何度ため息を吐いただろうか?



そんなくだらないことまで悩んでしまいそうな深刻な心境に陥りながらも、

グランパレスの1階に広がる広大な通路を歩いている。



「もうすぐ10時かな…?」



近くに時計は見えないけれど。


すでにそれくらいの時間だとは思う。



「今日は…。」



僕の人生で最も疲れた一日だった気がする。



「明日か…。」



明日の午後には僕の人生を選ばなければいけないんだ。



「シェリルと桐島さんはどうしてるのかな?」



シェリルはランベリアの仲間がいる宿泊部屋にいるはずだ。


だけど桐島さんがどうしているのかは分からない。



「結局、最後まで謝ってたな…。」



キリがないと感じるほど延々と謝り続けていた桐島さんは、

年齢や立場なんて気にせずに僕のことだけを思って謝ってくれていたんだ。



「何だか逆にすごく申し訳ないな…。」



僕がもっとしっかりしていれば桐島さんが謝る必要はなかったはずだ。


だけど僕が選べなかったせいで桐島さんが責任を感じてしまう結果になってしまったんだ。



「桐島さんとはもう一度ちゃんと話し合いたいな。」



どこにいるのかは分からないけれど。


もう一度話し合わないことには前に進める気がしなかった。



「あとで捜してみようかな?」



魔力の波動を追跡すれば合流は出来ると思う。



「僕が探知できる範囲内なら…だけどね。」



本当なら今すぐにでも探知してみるべきかもしれないけれど。


今はまだその時じゃない。



今の別の目的があって1階の通路を歩いているからだ。



「魔力の波動は動いてないね。」



30分ほど前に魔力の波動を探知してから今に至るまで『あの人』は一歩も動いていないようだ。



「あまり面識がないから話しかけ難いんだけど…。」



そうは言っても今の僕の状況を相談できる人なんて他には思い浮かばなかった。



「迷惑だと思われるかな?」



突然押しかけたら嫌がられるかもしれない。


そんなふうに思うけれど。


他には誰も思い浮かばないんだ。



「結局、康平達にも言えなかったしね…。」



桐島さんと別れて行動してから一度3階の部屋に戻ったんだけど。


みんなには何も話せないまま細々と夕食を終えて、

どこで何をしていたか等の話を極力避けるように行動していた。



…どう話せば良いのかが分からなかったんだよね。



康平や筑紫さんならちゃんと僕の相談に乗ってくれるとは思う。


だけどきっと。


二人は純粋に僕の結婚を喜んで祝福してくれるだけだと思うんだ。



「相談にならない気がするんだよね。」



話が盛り上がるだけで、

僕の悩みは解決しない気がしていた。



…だから。



だからこそ『あの人』なら話を聞いてくれるんじゃないか思ってしまったんだ。



…どうなのかな?



とても良い人だと思うから邪険に扱われることはないと思うん。


だけど慣れない人と話をするのはどうしても緊張してしまう。



「少し…怖いかな。」



そんなふうに思う必要はないんだけど。


どうしてもあしどりは重くなってしまうんだ。



…うぅ。


…緊張するよ。



相手が男性ならともかく、

これから会う相手が女性だと思うだけで必要以上に緊張を感じてしまうんだ。



「つくづく異性に弱いよな…。」



そんな自分がすごく情けなく感じるけれど。


落ち込んでいる間に目的地へたどり着いてしまっていた。



「き、緊張する…。」



目の前の扉に手を伸ばすだけでも体が震えてしまうんだ。



「落ち着け…落ち着くんだ…。」



震える体を気力で抑えて必死に冷静を装う。


そして『コンコン』と扉をノックしてから医務室の中へ歩みを進めることにした。


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