義を重んじる男
「すまない。きみにシェリルの過去を話したことが完全に裏目に出てしまった。それにきみを先行させたことで話の流れが読み切れずにシェリルの言葉を止めることさえ出来なかった。シェリルの性格を考えれば、あの状況でシェリルがきみから離れていくのは十分に考慮できたことなのに、それなのに俺は何も出来なかったんだ。」
………。
唯王女との結婚の話が出てからは一言も話をしなかった桐島さんだけど、
その理由はなんとかシェリルを止めようと考えてくれていたようだった。
「上手くシェリルを止められればまだきみの望みは繋げられたはずなのだが…。すまない。あの状況では俺にもどうすることも出来なかった。」
…い、いえ。
「本当にもう良いんです。ただ僕がシェリルに好きだと言えなかったことが原因なんです。もっと早くに勇気を出していれば結果は変わっていたかもしれないんです。」
「だが、それさえもきみには出来なかったはずだ。」
「そ、それは…。」
「きみは義を重んじる男だ。だからこそきみの行動はきみの意思によって束縛されてしまう。」
………。
「きみが何も言えなかったこと。それ自体がすでに俺の責任なのだ。」
…いえ。
「桐島さんの責任ではないです。これは…」
「…良いんだ。きみが責任を感じる必要はない。これは俺の失敗だ。全ての責任は俺にある。」
………。
僕が何を言っても自分の責任を追求する桐島さんは、
それからも何度も僕に頭を下げて謝罪を続けていた。




