楽しみにしておく
ひとまず唯王女との婚儀に関しては明日のお昼まで結論を持ち越すことになった。
…これで良いのかな?
今でもまだ悩んでしまうけど。
一旦、気持ちの整理をしないことには唯王女の想いを受け入れることも出来ないんだ。
「優柔不断ですみません…。」
ただただ申し訳なくて。
謝ることしか出来なかったんだけど。
「ははっ。まあ、それが当然の反応だろう。無理な決断を迫っても意味がないからな。きみがきみの判断で結論を導き出せば良い。」
…は、はい。
「ありがとうございます。」
「うむ。一晩しか時間はないが、ゆっくりと考えるといい。」
…はい。
「そうさせてもらいます。」
「ああ。それでは話が長くなってしまったが、ひとまずこれできみ達に伝えるべき話は以上となる。何か質問があれば聞くが…何かあるか?」
………。
「「………。」」
まだ聞きたいことがあるかどうかを尋ねてくれた杞憂さんだけど。
僕もシェリルも桐島さんも、
特に何も問い掛けることはなかった。
「何もないようなら話はこれで終わりだ。長時間付き合わせてしまってすまなかったな。」
「い、いえ…。」
穏やかな声で謝罪する杞憂さんに一礼してから何気なく時計に視線を向けてみると。
…もう7時を過ぎてるのか。
ここに来てからすでに3時間以上過ぎていた。
「もうこんな時間だったんだね…。」
あまりにも悩んでばかりいたせいで驚くほど時間が進んでいたらしい。
「結局、結論を出せないままですみませんでした…。」
「いやいや、気にする必要はない。きみをそういう状況に追い込んだのは我々なのだからな。」
………。
わざと情報を封鎖して僕に即決を迫っていた杞憂さんは、
僕を責めることなく優しく微笑んでくれていた。
「返事は明日の午後まで楽しみにしておく。」
「はっ、はい。」
自信をもった笑顔を浮かべる杞憂さんからは、
僕の返事に対する不安や疑問なんて感じられなかった。
もしかするとシェリルと同様に杞憂さんも僕の答えを確信しているのだろうか?
…それしかないっていうことなのかな。
みんながどう考えているのかなんて僕には分からないけれど。
…だけど。
唯王女との婚儀に関してみんなと話し合っている間、
桐島さんだけは一言も何もしゃべらなかった。
…桐島さんはどう考えているのかな?
あとで時間をとってゆっくりと話を聞いてみたいと考えていると。
「それではここでの会議はこれで終わりにしよう。」
杞憂さんが話をまとめたことで今回の会議は終了になった。




