現イーファから
「今ここで全てを証明するのは難しいが、俺が知る範囲内で説明するなら、まずは現イーファからだな。倉嶋善治殿を始めとした全ての魔術師達が賛同している。そして里仲利光が率いる陰陽師達もきみが国王ならば、これからも国家のために死力を尽くすと約束してくれているのだ。」
…え?
…倉嶋さん達だけじゃなくて。
「陰陽師の人達も?」
「ああ、そうだ。そして岡田義範が率いる騎士団もきみを新国王へ強く推薦していたな。」
…岡田さんまで?
かつては敵として僕に拷問を行っていたはずの岡田さんも僕を新国王に推薦してくれているらしい。
「イーファは全ての国民を含めた国家の総意としてきみを推薦しているのだ。」
「イーファが…僕を…?」
「信じられないか?」
「い、いえ、あの、その…。それは…。」
「ははっ、まあいいだろう。それならば話を続けよう。続いて現カーウェン連合国に関してだが、連合国のほぼ半数を超える国がきみなら異論はないと賛同を示している。」
「カーウェンまで?」
「カーウェンは特にきみが軍の指揮をとって活躍を見せた部分が大きいからな。直接きみが戦った国もそうだが、早々に停戦を受け入れた国がきみの就任に賛同しているのだ。そしてその中でも最後の強国であったクアラ国がまっ先にきみの名前を持ち出していた。」
…クアラ国?
「それって…?」
「ああ。現在クアラ国を統治している絹川紗枝王女の推薦だな。」
「絹川さんまで…。」
絹川王女も僕を推薦してくれているらしい。
その事実が僕の心を揺れ動かそうとしていた。
「本当に…本当なんですね。」
「信じてくれる気になったか?」
「一応…はい。」
「そうか。ならば良いのだが、ついでに説明しておくなら現セルビナ王国もきみの就任に関しては異論を唱えてはいないようだ。かの国は御堂龍馬が所属する共和国の部隊が制圧したのだが、それでも共和国の人間が王位に就くのなら全てを受け入れると宣言しているそうだ。」
「セルビナもですか?」
「ああ、そうだ。セルビナは海軍元帥の野々村斉蔵という人物が国を取り纏めているのだが、彼を含めた全ての軍の者達が魔術師の王を認めているようだ。ただ、その辺りの詳細に関しては俺もまだ把握仕切れていない部分があるのだが、セルビナが新国王として推薦したのはきみでも御堂龍馬でもなく『栗原薫』という少女だったらしい。」
…え?
「栗原さんですか?」
「戦時中に色々とあったのだろう。セルビナとミッドガルムは栗原薫を新国王に推薦しようとしていたようだが、本人が辞退を表明したことで断念したようだな。」
…えぇぇぇぇっ?
「栗原さんは辞退したんですか!?」
「堅苦しい役職にはなりたくないそうだ。まあ、個人的な感情に関しては分かりようもないが、彼女は医師として生きる道を選んだようだな。」
「国王の地位を捨てて医師に?」
「それも一つの決断だろう。彼女を責める理由にはなりえない。」
………。
国王の地位を蹴ってまで医師を選んだらしい。
その理由に関しては僕には何も分からないけれど。
だけどそこまでの覚悟をもって自分の道を選べる栗原さんが少し羨ましく思えた。




