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THE WORLD  作者: SEASONS
5月13日
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参加しない

「ひとまず共和国の包囲網には参加しないと決めたアルバニア王国だが、戦争そのものに参加しないというのはなかなか難しいものがある。」



…ああ、確かに。


…それはそうかもしれないね。



杞憂さんが指摘する言葉の意味は僕でも十分に推測できるからだ。


戦争が起きてしまった以上、

『参加しない』という方針だけでは終われない。



今後のアルバニア王国の立場を守るためには、

戦争をしている国のどちらかに協力しなければいけないからだ。


もしもなにもせずに傍観している間に共和国が勝てば肥大化した共和国との一騎打ちになるだろうし。


周辺各国が勝てば協力しなかった責任を問われて何からの責務を負わされることになる。



…戦争は終戦後も面倒だからね。



戦いが終わっても、

その後の処理が各国で揉める要因の一つになってしまうはずだ。



…どちらにも協力しないという選択肢はどちらも敵に回すという意味だろうからね。



何もしないという選択肢だけは選べないんだと思う。


だからこそ悩んでしまう板挟みの中で、

アルバニア王国が出した答えは共和国との対立を放棄するために同盟関係になることだったようだ。



「共和国に協力することで戦争を終わらせる道を選んだということですよね?」


「ああ、そうだ。」


「共和国に進軍しないにしても、別の方針を出す必要があったんですね。」


「ああ、そしてその選択が迫られる状況になった時に俺はかねてから考えていた案件を議題に出すことにしたのだ。」


「それってもしかして?」


「ああ、それこそが『三国同盟』であり、国家大編成になる。」



…やっぱり。



大陸南部に存在する7つの国を一度解体して新たに組み直すという大規模な計画。


それが国家大編成だ。



陰陽師の国であるアルバニア王国。


魔術師の国である魔導共和国。


そして両者が共存する第3の国という大規模な計画が議題として決議されるようになったらしい。



「国家大編成の計画は以前から考えていたんですか?」


「可能性の話として、そういう方法もあるだろうと考えていた夢物語だがな。だが、今回の戦争によって勝敗という結果が出れば実現不可能な計画ではないと考えた。」



…確かに。



「不可能ではないと思います。実際にセルビナやイーファやカーウェンは敗北を受け入れてますし、ミッドガルムも陥落したと聞いていますので。」


「ああ、そうだな。各国首脳達はすでに共和国に対して恭順の意思を示している。…と同時に、今の彼等はアルバニアに対しても抵抗の意思などないだろう。」



どうやら共和国包囲網を離脱して共和国に荷担した裏切り国であるアルバニアに対しても恭順の意思を示しているらしい。



「全て杞憂さんの計画通りに進んでいたんですね。」


「…どうだろうな。俺が考えたのは机上の空論でしかない。実際に戦争に勝てるかどうか?共和国が国家大編成の案を受け入れるかどうか?それらに関しては何の確証もなかったからな。」


「だけどアルバニア王国は杞憂さんの出した方針を決断して動いたんですよね?」


「まあそうなるな。ただその辺りの事情には複雑な部分もあるのだが、国家大編成を決定するにあたって最も大きな利点が貴族達を納得させるに値する内容だったというだけだろう。」


「利点ですか?」


「政治的な意味合いだ。共和国と同盟関係になれば今後の友好関係が向上して互いにいがみ合うことがなくなり、不要な軍事費用を抑えられるからな。それに最も大きな利点はアルバニア王国が大きくなるという部分だ。」


「それって、国土が広がるということですよね?」


「単純に言えばそうなるな。戦争に勝利することでイーファやセルビナの領土が手に入り、各国の資源やすでに発展している町が手に入るのだ。自国の富裕化という意味では大きな利点となるだろう。」



…だろうね。



良く言えば自国の強化。


悪く言えば他国の支配。


その微妙な判断の中で、

アルバニア王国の上層部は国家大編成による利益を選び取ったようだ。



…戦争を利用しての利益か。



そう考えると色々と思うことはあるけれど。


だけどそれくらいの利益がなければ今まで対立していた共和国と同盟関係になるという案は受け入れてもらえなかったのかもしれない。



…それに杞憂さんはそんな考えで動くような人だとは思えないしね。



利益だけを考えて戦争を利用したとは思えない。


あくまでもアルバニアの方針を決定させるために同盟による利益を示しただけだと思う。



「やっぱり杞憂さんはすごいですね。国家大編成という計画を提唱したこともそうですけど、その計画を実現させるために一国の方針までも変えてしまえるなんて、僕には想像も出来ない努力があったと思います。」


「俺の努力か…。確かに苦労した部分はある。それは確かだが、俺の苦労など『あのお方の苦しみ』に比べれば小さなものだ。」



…え?


…あのお方?



杞憂さんが何を思って誰と比べているのかなんて僕には全く分からない。



「えっと…。あのお方って、誰ですか?」



何となく気になってしまった疑問を問い掛けてみると。



「…きみは天城総魔という人物を覚えているか?」



杞憂さんは全く予想していなかった質問を返してきたんだ。


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