自身の情報公開
「ひとまず戦争の流れはだいたい理解できただろうか?」
…あっ、はい。
「だいたいですけど…。」
「うむ、今はそれでいい。そして肝心の本題に戻るのだが、アストリア王国が消失して各国に危機感が生まれた時に、唯様は魔術師との無益な争いを止めるために俺に相談を持ち掛けてくれたのだ。」
「それが自身の情報公開ですか?」
「ああ、そうだ。自らの存在を明らかにすることで戦争の推進派を説得しようと考えられたのだ。」
「でも…。」
それだと唯さん自身も危険になってしまうんじゃないだろうか?
「すでにきみも気づいているだろうが、これは簡単なことではない。情報を公開しただけでは更迭されて処刑されるだけだからな。それはいかに国王といえども止めることの出来ない絶対的な法になる。」
…ですよね。
王女だからと言って見逃して貰える問題じゃないはずだ。
それどころかこれまで隠していた事実を指摘されて国王の立場まで危うくなるはず。
「…どうやって説得したんですか?」
「とても簡単なことだ。」
推測さえできずに素直に問い掛けてみると、
杞憂さんは微笑んでから説明してくれた。
「力には力を。推測派には反対派をぶつけただけだ。」
…え?
自信満々に微笑む杞憂さんだけど。
聞かされた言葉は驚くべき内容だった。
「事前に唯様と打ち合わせをしていた俺は会議の場に魔術師を送り込んだのだ。」
「えっ!?」
…えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
国の方針を決定する場に魔術師を送り込んだ?
そんなことが許されるんだろうか?
「計画とは思い付いた時に動くのではない。あらゆる下準備を整えたうえで組み立てられるものなのだからな。」
説明の意味が理解できずに戸惑ってしまったんだけど、
杞憂さんは戦争が始まる以前から仕組まれていた計画に関しても話してくれるようだった。




