僕のために
…色々と確認したいことはあるけどね。
何よりもまず最初に確かめるべきことは一つしかない。
「康平、試合の結果はどうなったんだ?」
全員がここに揃っている以上、
今もまだ試合中ということは決して有り得ない。
「ランベリアとの試合はどっちが勝ったんだ?」
僕が眠っている間に進んでいた試合に関して問い掛けてみると。
「試合そのものはグランバニアの勝利だ。初戦の京一もそうだが、俺と美優も勝利したからな。」
「…と、言うことは?」
「ああ、3連勝で勝ち抜けだ。」
…そうか。
「良かった…。」
僕に続いて康平と筑紫さんも試合に勝利したことで、
ランベリアとの試合は僕達の勝利で終わったようだった。
「ごめんよ。肝心の僕が真っ先に倒れてしまって…。」
「ははっ、気にするな。それにどう考えてもシェリルに勝てるのは京一だけだからな。京一でさえ手を焼くような相手なら俺達ではどうしようもない。相手がシェリルなら京一だから勝利できたと考えるべきだろう。まあ、それはともかく、京一が無事ならそれでいい。」
…ありがとう。
僕が倒れてしまったことや敗北しそうになっていたこと。
そんな僕の試合の経緯に関して一切不満を言わなかった康平は、
ただ純粋に僕の心配をしてくれているようだった。
「歩けるか?」
…あ、ああ。
「大丈夫だよ。」
体に違和感は感じないし。
どこにも不調はないからね。
それどころか試合前以上に気分がすっきりしてるんじゃないかな。
「絶好調だよ。」
ベッドから降りて自分の足で立ってみても、
どこにも異常は感じられない。
「栗原さんのおかげかな?」
「おそらくそうだろうな。京一とシェリルの治療をしたあとで自分の試合があるからと言って医務室を出て行ったが、今度また出会う機会があれば礼くらいは言っておいたほうが良いだろうな。」
…ああ、そうだね。
…分かっているよ。
栗原さんには心から感謝しなければいけないと思う。
「シェリルを治療してもらったことも、あとでちゃんとお礼を言っておくよ。」
「ああ、そうだな。まあ、俺は治療に関して詳しいことは分からないが、感染症や後遺症に関しては何も心配しなくて良いそうだ。自信をもって完璧に治療したと宣言していたからな。京一同様にシェリルもそのうち目が覚めるだろう。」
…そ、そうか。
「それなら良いんだ。」
限界ギリギリまで無理を重ねて命懸けの魔術を展開していたシェリルは、
精神的な疲れが溜まって眠っているようだった。
…きみらしい戦いだったよ。
どこまでも気高くて。
どこまでも誇り高くて。
僕には高嶺の花かもしれないけれど。
だけどすごく優しくて。
僕のために戦ってくれたことが痛いほど伝わってくる試合内容だったと思う。
…ありがとう、シェリル。
シェリルの全てに感謝するために、
自然と頭を下げて一礼してしまった。




