久しぶりだな
………。
………。
………。
…シェリル。
…僕はきみのことが。
…ただきみだけが好きなんだ。
言葉に出来ない歯痒い想い。
焦燥感とも呼ぶべき切ない想いを感じながらも、
僕はゆっくりと意識を取り戻していった。
…って、あれ?
「ここは…?」
試合場ではない室内。
あまり見覚えのない場所でベッドに横たわっていることに違和感を感じてしまった。
「…どこなんだ?」
自分がどこにいてどういう状況なのか?
何一つ分からないまま静かに体を起こすと。
「京一!!!」
「澤木君っ!?」
聞き覚えのある声がすぐ近くから聞こえてきたんだ。
…ん?
まだ状況が分からないけれど。
周りを見て見れば誰が側にいるのかなんて聞かなくてもすぐに分かる。
…康平。
…筑紫さんに。
…みんなも。
僕と一緒に大会に参加している5人の仲間が側にいてくれたんだ。
「僕は…?」
「ようやく目覚めてくれたか…。もう2時間近く眠っていたからな。さすがに心配したぞ。」
まだまだ状況が理解できないことで、
みんなに話を聞こうとすると康平から先に話し掛けてくれたんだ。
…そうか。
…試合が終わってからもう2時間も経つのか。
「体の調子はどうだ?」
「え?あ、ああ…。うん。大丈夫だと思うよ。」
「そうか、それなら良いんだが、あまりにもひどい状況だったからな。美優だけでは治療が追いつかなくて栗原薫も協力してくれたんだが、ひとまず大丈夫ならそれでいいんだ。」
…え?
「栗原さんも治療してくれたのかい?」
「ああ、そうだ。万全な状況なら美優一人でも治療出来たかもしれないが、俺達も試合で魔力を消耗していたからな。見兼ねた栗原薫が手を貸してくれたんだ。」
…ん?
…あれ?
…試合?
「あっ!そうだっ!?試合はどうなったんだ!?」
康平の言葉が事実なら、
僕の試合が終わってからすでに2時間が経過していることになってしまう。
だけど僕はまだ試合の結果を知らなかった。
「シェリル達はどうなったんだ!?」
僕以上に重傷だったシェリルの容態も気になってしまう。
「シェリルは無事なのかっ!?」
体が分断されたシェリルの治療は僕以上に治療が難航しているはずだ。
「シェリルはどうしているんだ!?」
何も分からなくて。
ただただ恐怖だけを感じて焦ってしまったんだけど。
「…心配するな。」
…え?
すごく穏やかですごく落ち着いた雰囲気の声が後方から聞こえてきたんだ。
…今の声は?
聞き覚えがある。
…と言うか、忘れはしない。
「桐島さん?」
イーファで知り合った桐島亮平さんの声だと気づいて後方に振り返ってみると。
「久しぶりだな、澤木君。」
桐島さん本人がシェリルの眠るベッドの側にいるのが見えた。




