決着へと至る道筋
「………。」
………。
「………。」
………。
「………。」
………。
僕とシェリルの間で生まれる極度の緊張感が試合場全体に広がり。
試合を見守っている観客達も固唾を飲んで試合を眺めているのが見える。
そんな緊迫した空気の中で再びシェリルが動き出した。
「天には光、地には闇、空には風、海には水…。」
…なっ!?
「命には炎、死には土。巡り巡る悠久の時の流れにおいて、万物を滅する終焉の刻を今ここに…。」
…あ、あの術式はっ!?
シェリルの紡ぐ『力ある言葉』が何を示すのかは知っている。
「シェリル…本気なんだね…っ。」
「当然でしょう?」
ごくごく当たり前のこととして、
シェリルは究極の魔術を発動しようとしていた。
「お互いに手加減無し。それだけが決着へと至る道筋なのよ。」
…くっ。
シェリルが放とうとしている魔術。
その破壊力も知っていた。
…凌げるかっ!?
本来のシェリルに魔術の詠唱は必要ない。
だけどそれでもあえて詠唱を行っているのは理由があるからだ。
…僕に突破して見せろってことだね。
全力のシェリルの一撃を突破できるかどうか?
その結果だけをシェリルは求めているんだと思う。
…だったら逃げることはできない。
ここで逃げ出せばシェリルの信頼を失ってしまうだけだ。
…これは意地と意地の戦いなんだ。
お互いの誇りかけた唯一無二の攻防戦。
ここで気を抜いたほうが敗北への道を辿ることになる。
…シェリルらしい覚悟だね。
これはもう一撃必殺なんていう程度の生易しい攻撃じゃないからだ。
シェリルがこれから放とうとしている魔術は僕が知るどんな魔術よりも激しい純粋な破壊の嵐であり、
あの魔術から無事に逃れる方法は僕にはない。
…筑紫さんや常盤沙織でも防げなかった攻撃だからね。
僕が知る限りシェリルの攻撃を防げるのは『あの人』しかいなかった。
…だからこそ逃げられないんだっ!
ここで逃げれば僕はまた一歩遅れてしまう。
…凌ぎきってみせるっ!!!
…絶対にっ!!!
逃げることはできない。
負けることもできない。
シェリルの攻撃を正面から受けて、
シェリルを認めさせるほどの結果を出す以外に進むべき道はないんだ。
「受けてたつよ、シェリル。」
「やってみなさい。それが出来るものならね。」
数百枚のカードを全て頭上に投げ放つシェリルがたった一度だけ指を『パチンッ』と鳴らした次の瞬間に。
上空へと放たれた全てのカードが一斉に光を放って煌めいた。
…そして。
悪夢が宣言される。
「京一、貴方の力を見せなさい。」
全てのカードを魔術へと変換するシェリル。
その絶望的な魔術の名称はやっぱりアレだった。
「インフィニティ!!!!」
…っ!!
無限の名を冠する神速とも呼ぶべき最大最速の魔術が放たれたんだ。




