始まって数秒で
「試合始めっ!!!!!」
試合開始の合図の直後に、
瞬時に魔力を集めたシェリルがルーンを発動した。
「手加減はしないわよっ!!」
「ああ、分かってるよ。」
シェリルよりも少しだけ遅れて『鬼刀・風林火山』を発動させる。
そしてシェリルとの距離を全力で詰めようとしたんだけど。
「動きが遅いわよ京一っ!!」
…くっ!?
僕の瞬発力よりも早く魔術を展開するシェリルの攻撃が、
怒涛の嵐ごとく頭上から降り注いできた。
…早過ぎるっ!!!
試合開始から僅か2、3秒で数百種もの魔術を連続発動したシェリルの速度は僕の知る誰よりも早い。
…まるで魔術の嵐だね。
悪夢のような絶望的な威圧感さえ感じてしまう。
「ちっ!!疾風…迅雷っ!!」
慌てて居合斬りの衝撃波を放って降り注ぐ魔術を分断してみるけれど。
…数が多すぎて防ぎきれないっ!!!
数え切れないほど降り注ぐ魔術の勢いには対応しきれなかった。
「うっ、うわぁぁぁぁぁっ!!」
シェリルを倒すどころか、
まともに攻撃を受けてしまって試合場の外にまで弾き飛ばされてしまう。
…くそっ!
…体勢が立て直せないっ!
場外まで吹き飛ばされた僕の体が勢いよく地面に激突した瞬間に。
…ぐっ。
…うぅぅっ!!
落下の衝撃で息が詰まってしまって、
思わず呼吸が止まってしまっていた。
「かはっ!!ごほっ!ごほっ!」
呼吸さえも苦しくて。
一瞬だけだったとは言え息が詰まってしまったことで意識が飛んでしまいそうになっていた。
その瞬間に気づいてしまったんだ。
…吐血?
口から吐き出した血が地面を濡らしている。
…今の一撃だけで内蔵がやられたのか?
場外に落ちた影響で全身が痛くて何が原因かなんてわからない。
そのうえ目では見えない体内の状況なんて僕には考えが回らないけれど、
血を吐く理由は他に考えられないと思う。
…口の中を切ってるわけじゃないからね。
喉の奥から込み上げて来る何かを感じることを考えれば確実に体内で影響が出ているはずだ。
…始まって数秒でこの有様か。
決して油断していたわけじゃないけれど。
僕が思っていた以上にシェリルの攻撃が早かったんだ。
「文字通りの速攻だね…。」
ふらつく体を力付くで起こしながら何気なく呟いてみると。
「もう忘れたのかしら?」
シェリルが試合場の上から僕を見下ろしていた。




