誇りに思ってほしい
「第1回戦、第5試合目も終了しました!!これによりジェノス魔導学園は3勝2敗となり、第2回戦への進出も決定しましたー!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!」」」」」
係員の宣言によって広範囲に広がっていく声援。
再びジェノス魔導学園への賛辞が飛び交う中で、
筑紫美優の治療を終えた雪が澤木京一の治療のために御堂の側へと歩みを進めていく。
「お二人とも治療しますね。」
「あ、ああ。ありがとう。ごめんね。」
「いえ、これが私の役目ですから任せてください。」
遠慮がちに感謝する御堂から澤木京一の体を預かった雪は、
即座に回復魔術を展開して澤木京一の裂傷をものの数秒で完治させた。
「出血は止められましたが、体内の治療と魔力の供給にはまだ少し時間が必要です。一応、命に別状はないと思いますので安心してください。」
「そうか…。良かったよ。」
雪の言葉を聞いた御堂は心からの安堵の言葉を呟いてからグランバニア魔導学園の生徒達に深々と一礼した。
「心配をかけてごめん。だけど僕はまだ立ち止まれないんだ。僕にはまだ目指したい場所があるから、だからここで立ち止まることは出来ないんだ。きみ達には申し訳ないけど年間制覇は僕が達成して見せる。他の誰にも、これだけは絶対に譲れないんだ。」
盛長康平や筑紫美優、
那岐知美や菊地英樹など。
雪の治療によって再び行動できるようになったグランバニアの生徒達は黙って御堂の言葉を聞いていた。
「きみ達はみんな以前よりもすごく強くなったと思う。それはきっと僕だけじゃなくて、この試合を見た沢山の人達が分かってくれていると思う。だから試合の結果だけを考えるんじゃなくて、ちゃんと成長して強くなったという事実を誇りに思ってほしい。」
「ああ、分かっている。」
「私も大丈夫よ。例えここで敗退したとしても私達の価値は何も変わらないわ。周りがどう評価するとしても私達は私達よ。」
試合の結果よりもこれまでの成長に対して自信を持つように話し掛ける御堂に、
盛長康平も筑紫美優も自信をもって答えていた。
「澤木君が望んだように、私達もあなた達が優勝を勝ち取って年間制覇を成し遂げるのを祈らせてもらうわ。」
失意や悔しさを見せずに毅然とした態度で敗北を受け入れる筑紫美優の姿は俺でさえ惚れ惚れとするほど輝いて見えた。
…良い仲間だな。
澤木京一も良い仲間をもっている。
ただそれだけで澤木京一の人柄が良く分かるほどだ。
…大した男だよな。
御堂に匹敵する尊敬すべき男として、
俺も澤木京一を称賛したいと思う。
…お前は確かに英雄だ。
西や東なんてつまらない区分は必要ない。
『実力と性格、技術や心』
それら全てが英雄としての資質に満ちている。
…自信をもてよ澤木京一。
試合では敵だが試合が終われば魔術師の仲間として澤木京一の未来も願いたいと思う。
…お前はまだまだこんな所で終わる器じゃねえぜ。
澤木京一はまだまだ成長できる。
そんなふうに考える俺の想いを代弁するかのように、
御堂はグランバニアの生徒達に言葉をかけ続けていた。




