時代の流れは
「素直にきみを尊敬するよ。」
僅か一ヶ月という短い期間で驚異的な成長を遂げた澤木京一の実力を認めた御堂は、
大剣を構えながら迎撃用の魔術を展開していく。
「きみの努力を認めるよ。」
見知らぬ土地で命懸けの戦場を生き抜いてきたこと。
単なる一生徒ではなくて戦士として成長したこと。
そして魔術師としても上位の一人ではなくて頂点を競い合える実力に達していること。
それら幾つもの努力を認めた上で御堂も決着へと動き出そうとしていた。
「きみは確かに強くなった。だから僕も全力で戦い抜くよ。譲れない目的のために、お互いに死力を尽くそう。それが僕達の仲間達へのただ一つの礼儀だと思うからね。」
「…礼儀か。確かにそうかもしれない。」
御堂の言葉に同意した澤木京一も最後の一手に自らの運命を托そうとしていた。
「この一撃は僕だけの力じゃない。この一撃は大切な仲間達と共に過酷な日々を戦い抜いてきた想いや絆が込められた一撃なんだ!」
例え試合場に立つのは一人であっても、
その場所に立つまでには仲間達の協力があったはずだ。
御堂との決着をつけるためにずっと支え続けてくれていた仲間達の存在があっただろう。
…俺達だけじゃないんだよな。
御堂だけが特別なわけじゃない。
俺達の知らないところで、
俺達と同じように苦しんでいた奴らがいる。
…澤木京一の成長も仲間がいてこそ辿り着けた力なんだよな。
本当に何度も思う。
もしも立場が違っていたら?
天城総魔が出会ったのが御堂ではなくて澤木京一だったなら?
共和国の未来は全く別のものになっていたかもしれない。
…御堂という存在に隠れてしまった英雄か。
時代の流れは御堂を選んだ。
だが澤木京一は決して弱くはない。
…どちらが勝ってもおかしくねえ。
澤木京一の一撃が御堂を越えるかどうか?
その一撃に澤木京一の人生がかかっているとも言えるだろう。
…歴史に名を残すか?
…それともこのまま時代の流れに埋もれてしまうのか?
その全ての答えは次の一撃で決まる。
…どうする、御堂?
互角の実力を持つ澤木京一に御堂は勝てるのか?
その答えを導き出すために。
「この一刀に僕の全てを込める!」
御堂もありったけの魔力を残らずルーンに集約していた。




