この私の目の前で
「ここまで戦い続けてくれた仲間達のために!!僕はきみを乗り越えるっ!!!」
最強の障害と呼べる御堂を乗り越えるために澤木京一が最後の攻撃に打って出る。
「風林火山の名にかけて!!全てを制する武王の力を解放する!!」
溢れ出す魔力と吹き荒れる覇気を崩壊した試合場の全土にほとばしらせながら再び刀を鞘に収めた。
「これが僕の真の一刀だ!!!」
ただ真っ直ぐに御堂だけを見つめて刀に力を込める。
膨大な魔力の全てをルーンに集約する究極の一撃。
…ちょ、ちょっと待て!
…これはヤバすぎるだろっ!!!
確実に試合場の防御結界を突き抜ける破壊力を秘めているように思う。
…位置的にやべえっ!!!
澤木京一の攻撃の進行方向にはもちろん御堂がいるわけだが、
その御堂の後方では俺達が待機しているからだ。
…御堂が攻撃を回避すれば俺達に直撃するぞっ!!
俺の力では澤木京一の攻撃は防げない。
もちろん里沙や由香里では全く戦力にならない。
「鈴置っ!!今すぐに防御結界を展開しろ!御堂が防ぎきれなかった攻撃の余波が俺達に届く可能性がある!!」
「え?え、ええ…っ。分かったわ!」
突然の指示に戸惑いながらも即座に対応してくれる鈴置には心から感謝したいものの。
…鈴置だけだと危険かっ!?
雪も協力してくれれば安心できるんだが、
肝心の雪は筑紫美優の治療のためにグランバニア側の待機所にいる。
…くそっ!
…俺もやるしかねえかっ!!
あまり戦力にならない気もするが、
黙って見ていられる状況じゃないからな。
「全力で防ぐぞっ!!!」
鈴置の防御結界に重ねるように俺も魔術を展開すると。
「馬鹿ね~。あんた程度の防御結界なんて何の役にも立たないわよ。」
俺の危機感を感じ取ってくれたのか、
里沙が前方に歩み出てきた。
「こういう時こそ私の出番でしょ?」
珍しく真剣な表情で前に出た里沙が俺と鈴置の結界に新たな防御結界を重ねてくれた。
「支援なら任せなさい!」
………。
自信をもって宣言する里沙の発言は確かで、
俺が生み出した防御結界よりも遥かに強固な結界が俺達の待機所を包み込んでいる。
「ねえ?この私の目の前で、あんたが倒れることなんてあると思う?」
…はぁ?
里沙の発言は常に全く理解できない。
「どういう意味だ?」
「…ったく、本当に馬鹿ね。この私がいるのにあんたが焦る必要はないって言ってるのよ。いい?淳弥を虐めて良いのは私だけ。他の誰にも勝手なことはさせないわ!」
…いや、だから何なんだ?
…って言うか、いつからそんな権利が発生したんだ?
いまだに里沙の考えは何一つ理解できない。
…だが。
里沙は俺の予想を遥かに上回って、
鈴置に匹敵するほどの防御結界を俺達の目の前で展開してくれていた。
…まあ、何でも良いか。
結果的に澤木京一の攻撃を防げれば問題ないからな。
…3人がかりだ。
…これでも防げなかったら御堂でさえもどうにもならないだろうな。
澤木京一と向き合う御堂がどこまで攻撃に耐え切れるのか?
その疑問が不安となって焦りを感じ始める俺の視線の先で。
「…お互いに成長したね。」
御堂はゆっくりとした動きで澤木京一に大剣を向けていた。




