この先にはまだまだ
…ちっ!
…どっちもバケモノだな。
御堂と澤木京一。
二人はどちらも身体能力がずば抜けているが、
魔術師としての格が他の生徒達を圧倒的に凌駕している。
…一撃ごとの重みがハンパじゃねえ。
総合的な実力ではまだ姉貴や慶太には及ばないかもしれないが、
単純な破壊力だけを見れば二人の魔術は姉貴達と同等の威力があると思う。
…魔術大会でこの試合は危険すぎるだろ。
前回の大会では決勝の直後に御堂と天城総魔が対戦したようだが、
おそらくはそれ以上の激戦が俺達の目の前で繰り広げられている気がする。
…もしも今回もこの試合場に天城総魔が姿を現すようなことがあれば?
もしも御堂と天城総魔の試合が発生すればグランパレスは確実に崩壊するだろう。
…御堂がどれほど成長しても天城総魔はさらにその先にいるからな。
御堂と澤木京一の二人でさえすでに会場の結界を破壊しつつある。
その現実を考慮すれば御堂と天城総魔の試合に防御結界が耐え切れるとは到底思えない。
…まあ、出てこないとは思うけどな。
わざわざこんな大舞台に天城総魔が出てくるとは思えない。
…少なくともお互いに全力で戦える環境を整えてからだろうな。
天城総魔にとって試合で疲れ果てた御堂を倒しても何の意味もないはずだ。
…気力、体力、そして魔力。
…それら全てが万全な状態で戦わなければ意味がないだろうからな。
全力を出しきったうえでの決着でなければ戦う意味がないはず。
…まあ、その辺りの先の話は今は良いんだが。
俺が考え事をしている間にも二人の試合は続行している。
…今は澤木京一との決着だな。
御堂にとって最初の難関であり、
天城総魔へとたどり着くための最初の一歩とも言える澤木京一の撃破に成功しなければ運命の決戦は実現しない。
…さっさと乗り越えろよ御堂。
澤木京一はまだ最初の障害でしかない。
…この先にはまだまだ強敵が沢山いるんだぜ。
シェリル・カウアーや上矢遥。
大塚義明やフェイ・ウォルカ。
そして。
…まだまだ実力未知数の魔女達がいるんだからな。
1回戦で手こずっている暇はない。
年間制覇という目的にたどり着くためにはまだまだ乗り越えなければならない強敵達がうようよいる。
…まずは一手だ。
最後の決戦へとたどり着くための一手目。
澤木京一という障害を乗り越えることで、
御堂は決戦へと歩みを進めることが出来る。
…澤木京一を乗り越えろ。
姉貴達からの指令という強制的な任務ではなくて、
俺自身の意思として御堂の勝利を願う。
…世界を手に入れるのはお前だ。
悲しみを知り、
弱さを知る御堂だからこそ世界の光になれると信じている。
…早くたどり着け。
進むべき道の先にいる最後の強敵を倒すために。
…歩み続けろ。
ただ御堂の勝利だけを願い。
試合の行く末を見守る中で。
「力の出し惜しみはしない!!」
澤木京一が再び攻勢に出ようとしていた。




