居合斬り
「手加減はしないっ!!」
全速力で御堂との距離を詰めた澤木京一は、
冷たく光る刃の切っ先を御堂の体に目掛けて突き出してくる。
「静林…牙突!!」
突撃による速度に腕力を付加した最速の突きだ。
俺の奇襲攻撃に匹敵するほどの俊敏な動きで突き出した刃は、
的確に御堂の心臓に狙いを定めていた。
「まずは一撃っ!!!」
「まだ勝利を確信するのは早いっ!」
先手を打って戦況を自分の有利に持ち込もうとする澤木京一だったが、
御堂も素早い身のこなしで澤木京一の突きを大剣で弾いて防いでみせた。
「この程度の突きで僕は倒せないよ。」
「…ああ、そうみたいだね。」
御堂の指摘を受けた澤木京一は少しだけ悔しそうな表情を見せていたが、
それでも力が及ばなかったことを素直に認めていた。
「悔しいけれど…。だけどそれでこそ倒しがいがあるんだ。」
「ははっ。それはお互い様かな?きみの動きは以前よりも確実に洗練されているよ。だけど剣術という意味ではまだまだ実力が足りない。単純な技術力は立花光輝さんのほが遥かに上だからね。」
「立花…光輝?」
「きみは知らないかもしれないね。だけど僕だってきみの知らない戦場で命懸けの戦いを続けていたんだよ。魔術師や陰陽師、それに軍の兵士達。そういう様々な人達と戦ってきたからこそ僕自身の戦闘技術が向上していると思うんだ。そうして少しずつだけど戦いの中で積み重ねてきた経験や知識が今の僕の根底に在るんだよ。」
「…なるほどね。確かにそれはあるだろうね。」
互いに別々の道を歩み、
それぞれがそれぞれに命懸けの戦場を戦い抜いてきた。
その思い出を糧として、
二人は手にしているルーンに膨大な魔力を込めていく。
「お互いに強くなったことを認めるしかないね。」
自分だけではなく相手も成長している。
その事実を認めた澤木京一は、
一歩だけ後退して御堂との距離を開いてからすぐに刀を鞘の中に納めて最速の一撃を放った。
「僕は僕の力を出し尽くす!疾風…迅雷!!」
鞘に納めた刀を瞬時に抜き放ち、
全力で居合斬りを繰り出してきた。




