きみを信じてる
「2勝2敗へともつれこんだ激戦もいよいよこれが最後です!!第2回戦へと駒を進めるために栄光の勝利を手にするのは一体どちらの学園なのかっ!?互いに一歩も退けない両学園の戦い!ジェノス魔導学園とグランバニア魔導学園の運命はやはりこの二人に委ねられましたー!!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」」」」」
第1回戦の大詰めということで今まで以上に盛り上げる係員の言葉によって会場全体の熱気が高まっていく。
そうしてついにこの瞬間が訪れた。
「ジェノス魔導学園からはついに御堂龍馬選手の登場ですっ!!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」」
係員の宣言と同時に巻き起こる怒号のような声援が広がり。
「対するグランバニア魔導学園からは澤木京一選手の登場です!!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」」」」」
続く係員の呼び掛けによって澤木京一が試合場へと歩きだしたことで、
決勝戦同然の熱狂が会場全域へと広がっていく。
…凄まじい熱気だな。
個人的には大会を観戦するのが今日が始めてということもあって、
ここまで盛り上がるとは思ってもいなかった。
…これが御堂と澤木京一の決戦なのか?
毎月恒例になっている頂点の争い。
今回は1回戦という下層での戦いだが、
それでもこの二人が試合場に立てばそれだけで決勝戦同然の試合と言えるようだ。
「ようやく出番だな。」
ここへ来るまでに色々あったが、
ひとまずこれで俺の役目は無事に進行することが出来る。
「澤木京一を倒してこい。そして御堂の実力をもう一度共和国中に示してこい。」
御堂の勝利は絶対で、
決して揺らぐことはないはずだ。
「ああ、行ってくるよ、淳弥。きみの想いに応えるために。そしてきみの努力を無駄にしないために…ね。」
………。
御堂は俺の行動には触れずに俺のために戦うと言ってくれた。
「何も聞かないんだな。」
「ああ、何も聞かないよ。聞いてもきみは何も言わないだろう?」
「…まあ、そうかもな。」
「ははっ、きみは正直だね。だけど僕はそんなきみを信じているんだ。例えどんな状況であっても、きみだけは最後まで僕の味方だって信じてる。だから僕はきみを疑ったりしないし、きみを問い詰めようとも思わない。いつだってきみは僕のために戦ってくれていると思うから、だから僕は何も聞かないよ。」
…御堂。
「すまない。」
「良いんだよ。ただ…それでもね。これだけは言わせてもらっても良いかな?」
「ん?何だ?」
「ありがとう、淳弥。きみがいてくれて本当に良かった。きみが僕の味方でいてくれて本当に良かった。きみが僕にしてくれたこと。きみが僕のために頑張ってくれたこと。その全てに感謝してる。それだけは忘れないでほしい。」
…は、ははっ。
「感謝か…。俺にはもったいない言葉だな。」
「そうかい?そんなことはないと思うよ。僕からきみに言える本当の気持ちだからね。だからきみはきみの自由にすれば良い。僕は何も言わないし、何も聞かない。だけど僕はいつだってきみを信じてる。そのことだけを覚えていてくれたなら、僕はそれだけで十分だよ。」
「御堂…。」
「それじゃあ行ってくるね。きみが用意してくれたこの舞台を乗り越えるために。そして澤木君との決着をつけるために…。必ず勝ってくるよ。」
「ああ、御堂なら大丈夫だ。」
「ありがとう、淳弥。きみにそう言ってもらえることが、他の何よりも嬉しいよ。」
…御堂。
「それじゃあね。」
………。
何も言えずに黙り込んでしまう俺に優しい笑顔を見せた御堂は静かに試合場へ向かって行った。
…御堂。
…すまない。
本当なら全てを打ち明けてしまいたいが、
今の俺にはそれが出来なかった。
…すまない、御堂。
ただ謝ることしかできず、
御堂と向き合うことさえ出来ない。
…だけどな。
だからこそ思うんだ。
…そんなお前を支えたいと思うんだよ。
全ての悲しみをたった一人で抱え込んで、
誰も責めずに自らを責める御堂だからこそ守りたいと思うんだ。
…お前こそがこの世界の光だ。
天城総魔をも動かした光であり、
俺だけではなく多くの仲間達を導く大切な光。
この世界は御堂龍馬を中心として動いていると言っても過言ではないと思う。
…例えお前がその事実に気付いていないとしても。
いずれ世界が御堂龍馬を認める日が来るはずだ。
そう思うからこそ。
…俺がお前を守る。
輝かしい未来をつかみ取るために。
この世界を光で満たすために。
…俺がお前を守り抜く。
その代償として例えどれほどの罪をこの身に負うとしても。
例えどれほどの絶望をこの手で生み出すとしても。
…誰にもお前の光を奪わせはしない。
常に隠し事ばかりで嘘を塗り重ね続けるこんな俺を『信じる』と言ってくれた御堂のために。
…俺はこれからも戦い続けるだけだ。




