決着をつけるための
「まあ、とりあえず次を考えようぜ。」
雪の配慮のおかげで鈴置が非難を浴びることは無事に回避できた。
鈴置自身はまだ申し訳なさそうな表情を浮かべているが、
里沙も由香里も不満を言葉にする様子はなさそうだ。
「ひとまずこれで2勝2敗だな。」
試合内容は3勝と言えるが、
鈴置が棄権したことで勝敗は五分になっている。
「次の御堂の試合で決着が着く。」
すでに対戦順を操作していたという事実が明らかになっているから今更隠す必要はないだろう。
「最後の試合には澤木京一が出てくる。そこで御堂が勝てるかどうかが、今大会の最大の見所と言えるだろうな。」
「…そのために僕を最後にしたんだね。」
「ああ、御堂には澤木京一と戦う義務があるだろ?これまで決勝を争ってきた相手だ。お互いの決着をつけないまま終わるわけにはいかないだろ?」
「ああ、そうだね。」
俺の諜報活動に関しては少なからず思うことがあるようだが、
それでも澤木京一との決着は御堂にとっても大きな意味を持つ大事な戦いのようだった。
「澤木君とはちゃんと試合をしたいと思っていたんだ。だからこの機会がきたことは素直に嬉しく思うよ。」
一年間の決着をつけるための最も重要な一戦。
年間制覇を実現するための大切なこの試合は御堂自身も待ち望んでいたらしい。
「僕としても避けて通りたくはない大事な試合だよ。」
最大の強敵と戦わないまま次へ進むことは出来ないという想いを感じさせる言葉を呟いた御堂の想いに応えるかのように。
「それではただいまより第1回戦第5試合を始めたいと思います!!!」
係員が最後の試合を宣言しようとしていた。




