一時的に
「どう?百花は大丈夫?」
俺を放置した里沙は百花の状態を心配して雪に治療の状況を尋ねている。
「百花は助かったの?」
さっきまでの勢いがどこへ消えたのか?
今の里沙の表情は不安一色に染まっているようにしか見えない。
「ねえ?」
「…もう大丈夫ですよ。」
何度も問い掛ける里沙に雪は笑顔を向けていた。
「傷の治療は無事に終わりました。今はまだ眠ってますけど、しばらくすれば自然に目覚めると思います。」
「そ、そう…。良かった…。ありがとう。」
「いえ、私に出来ることはこれくらいしかありませんので…。」
直接試合に参加できない雪は里沙に小さく頭を下げてから里沙に対しても魔術を展開していた。
「魔力を供給しておきますね。」
「え?供給?」
すぐには言葉の意味を理解出来なかった様子の里沙だが、
雪が魔術を展開して魔力を回復したことでようやく事態を把握したようだった。
「う、嘘っ!?竜崎さんも魔力の供給が出来たの!?」
「あ、はい…。一応…と言うか、一時的になんですけど。皆さんの魔力の供給係としてお手伝いするようにお姉ちゃんに頼まれているんです。」
「ウィッチクイーンに…?」
「はい。」
「…そう。それであなたがここにいるわけね。」
雪が魔力の供給を出来る。
その偽りの事実によって里沙は雪がここにいる理由をようやく納得してくれたようだった。
「そういうことなら文句は言えないわね~。」
雪の協力は重要で確かな価値があると判断した里沙だが。
「でも、どうせなら対戦相手の魔力も回復してもらわないと公平とは言えないわよね。」
それでもまだ不満はあるようだった。
「やるからには正々堂々と戦いたいんだけど。相手の魔力の供給もしてくれるの?」
「はいっ♪もちろんそのつもりです。皆さんが全力で試合が出来るように私も精一杯ご協力させていただきます。」
同じ条件下での試合を望む里沙に雪は迷うことなく宣言していた。
「全試合を皆さんが全力で戦えるようにしっかりと手当をさせていただきます。」
「そう、それなら良いわ。」
雪の役目を確認して自分の理想通りに進むことを理解した里沙はようやく納得した様子だった。
「それじゃあ、改めてよろしくね。竜崎雪さん」
「あっ、はい。こちらこそよろしくお願いします。芹澤さん。」
「あははっ。里沙で良いわよ~。」
「それじゃあ、私も雪で良いです。」
「ふふっ。」
「あはっ。」
「よろしくね、雪さん。」
「はい。よろしくお願いします、里沙さん」
お互いに少し打ち解けた里沙と雪は、
しっかりと握手を交わすことでお互いの存在を認め合っていた。




