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里沙でも
「百花…。」
倒れた百花の治療を雪が全力で行うすぐ傍で、
里沙が泣きそうな表情で意識を失っている百花を見つめている。
…里沙でもそんな顔をするんだな。
俺に対しては絶対に見せないが、
他人を心配する気持ちはちゃんとあるらしい。
「馬鹿…。そこまで頑張る必要なんてないじゃない。こんな試合なんかで死んじゃったら、せっかくここまで頑張ってきた意味がないじゃないのよ…。」
…ああ、そうだな。
小さな声で語りかける里沙に普段の強気な態度は見えない。
だからこそ言いたいことは俺にも理解できた。
…里沙でも落ち込むんだな。
誰にでもそういう時くらいあるとは思うんだが、
里沙のこういう姿はあまり見たことがなかったから少し驚いてしまう。
…涙か。
一滴だけ流れ落ちた涙が里沙の想いを表している。
「百花…。お疲れ様。」
俺には決して見せないようなとても穏やかな表情で声をかけた里沙は、
気持ちを切り替えてから百花の治療を行う雪に話し掛けようとしていた。




