抱きしめていると
《サイド:御堂龍馬》
彼と真哉の戦いを見届けたあとで、
特風会に向かうために校舎の屋上へと移動した。
だけどさすがに検定試験会場からここまでは遠いね。
普段なら気にならないけれど、
今は沙織を抱きかかえているから余計にそう思ってしまう。
…けれど、この状況に不満なんてないよ。
こうなってしまったことは仕方がないことだと思うからね。
試合をする以上はどちらかが勝って、どちらかが負けるのは当然の結果なんだ。
それ自体に不満なんて言えるわけがない。
それに、沙織は単に眠っているだけだからね。
彼を責めることなんてできないよ。
まあ、そもそもそんなことを考えようとも思わないけどね。
それよりも。
こうして沙織を抱きしめていると、
沙織を守ってるっていう感じがするから、
それほど悪い気分ではないね。
むしろ落ち着いて行動できる余裕が持てているかもしれない。
校舎の階段を上る途中で体力的な限界を感じかけてはいたけどね。
それでも沙織一人くらいなら抱きかかえていても良い運動だったと思うよ。
大切な仲間だからね。
落とすようなことは絶対にしない。
しっかりと沙織を抱きかかえたままで、屋上にたどり着いたんだ。
そして屋上に着いてからすぐに、
正面にある会議室に入ることにした。




