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THE WORLD  作者: SEASONS
5月13日
4016/4820

逃げなさい

…先手必勝っ!



「全力で行くぜ!!」



盛長康平が動き出す前に一撃を入れられれば戦局は俺の有利になるはずだ。



「翔べ!サンダーバード!!!」



前方へ突き出した左手から生まれる雷が俺の前方で弾ける。



「吹き飛べっ!!!」



雷の中から大きな鳥の姿を持った精霊が生まれて、

熱気を帯びた両翼を広げながら盛長康平に向かって突き抜けていく。



…様子見は無しだ。



雷鳥が盛長康平に直撃する瞬間を見定めながらルーンを展開する。



…一気に勝負を決める!!



とにかく初っ端から全力で攻め込むことにしたのだが。


「ふんっ!!ナメるなぁっ!!」


雷鳥が直撃する前にルーンを発動した盛長康平は生み出した巨大な斧を叩きつけて強引に雷鳥を受け止めてみせた。



…な、んだとっ!?



単に受け止めただけではなく、

盛長康平は俺の精霊を堂々と掴んで見せた。



「生温い!!!この程度で俺に勝てるなどと思うなっ!!」



…ちっ!


…精霊を掴むだと!?



気合い一閃。


大きな声で叫んだ盛長康平は、

ホンの一瞬だけ動きを止めた雷鳥を無理矢理素手で捕らえてから試合場に叩き付けやがった。



…化け物かっ!!



「精霊ごときで俺を吹き飛ばせるなどと思わないでもらおうか。」



…じょ、冗談だろ!?


…何なんだこいつはっ!?



まるで何事もなかったかのように雷鳥を踏み潰した盛長康平は、

軽く両手をはたいてから巨大な斧を構え直している。



「この程度の一撃など。京一の苦しみに比べれば微々たる力だ。」



…はぁ?


…苦しみだと?



どういう意味かは分からないが。


怒りや悲しみが入り混じっているかのような複雑な表情を見せた盛長康平は、

雷鳥の影響によって焼けただれているはずの両手の痛みを一切気にした様子もないまま俺に向かって一歩を踏み出してくる。



「例え両手がちぎれようとも、俺の行く手を阻むことは出来ん!」


「ちっ!!」



試合場に沈んだ雷鳥をあっさりと踏み越えた盛長康平は、

体勢を低く構えてから巨大な斧を試合場スレスレに平行に構えた。



…何をする気だ?



「先に言っておくが、俺を相手にするのならあまり調子にのらないほうがいい。俺とお前では相性が悪すぎるようだからな。」



…はあ?


…相性だと?



淡々と宣言する盛長康平は低く構えた体勢から全力で斧を振り抜いてきた。



「これが本物の力だ!!!アース・クラッシャー!!!!」



遠心力を最大限に発揮するためだろうか?


勢いよく斧を振り回しながら立ち上がり。


空に向かって斧を振り上げた直後に。


試合場に深々と突き刺した斧がグランパレス全体を揺るがすほどの局地的な地震を生み出した。



…なっ!?


…地震!?



でたらめな破壊力を持つ盛長康平の攻撃は試合場を一撃で半壊して、

周囲に膨大な瓦礫を撒き散らしている。



「くそっ!逃げ切れねえっ!!」



まるで爆弾が爆発したかのような強烈な爆風と瓦礫の山が俺と審判員に降り注ぐ。



「…逃げ切れると思うな。」



…なっ!?



吹き飛ぶ瓦礫の中を駆け抜ける盛長康平の殺気が俺の体を突き抜ける。



…や、やべぇっ!!!



先手必勝を狙ったはずが逆に先手を取られて体勢を崩されてしまっている。



…あんな体力馬鹿の一撃を受けたら勝ち目なんてねえぞ!!



俺と盛長康平では破壊力に差がありすぎる。


俺の一撃は捩じ伏せられてしまったが、

盛長康平の一撃は俺を叩き伏せる威力があるのは間違いないだろう。



…逃げるしかねえっ!!!



まともに食らえば確実に負ける。



「ちっ!一度体勢を立て直すしかねえかっ!」



全速力で接近して来る盛長康平の巨大な斧の射程距離に入ってしまう前に反撃を試みる。



「全力で放つ!イクシオン!!」



俺に放てる最大級の雷で盛長康平の接近を阻もうとしたのだが。



「温いと言ったはずだっ!!」



…嘘だろっ!?



盛長康平はイクシオンの直撃を受けてもなお速度を落とさずに雷を突き抜けて俺の目前へ迫ってきた。



「ここでお前の出番は終わりだっ!!」


「ちぃっ!!!」



振り下ろされる巨大な斧を必死に受け止めようとした瞬間に。



『逃げなさいっ!!!!』



…はっ!?



突如として聞こえた声に恐怖を感じて身体が反射的に反応していた。



…何だ!?



盛長康平の斧を回避した直後に。



…なっ!?



試合場が真っ二つに割れて底が見えないほどの大地の割れ目が発生するのが見えた。



…うおっ!?



「マジで殺す気か!?」



たった一度の攻撃を見ただけで、

俺の背筋を冷たい何かが走り抜けていく。



…うぁー。


…これが寒気ってやつか。



力に対する純粋な恐怖。


殺意の現れとも言える大地の割れ目が盛長康平の本気を現しているのが感じられた。



もしも姉貴の声が聞こえていなかったら、

俺はここで死んでいたんじゃないか?



…た、助かったぜ、姉貴。



「…すまねえな。」



視界の片隅に移る姉貴に感謝の言葉を囁いてから盛長康平に意識を戻すと。



…ちっ!!



盛長康平はすでにさらなる追撃に動いていた。


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