形だけの抽選結果は
ひとまずカリーナが３２番を引いたことで、
自動的に最後の一枠が確定することになった。
「これでマールグリナの１８番が確定したな。」
最後にクジを引く栗原薫が行うことになった形だけの抽選結果はもちろん１８番だ。
…栗原薫には可哀相な気もするが、マールグリナとデルベスタの試合はもう勝敗が確定してるな。
どう考えても栗原薫に勝ち目はない。
そもそも勝ちにいくつもりさえないだろうが、
相手がフェイ・ウォルカでは本気を出しても勝てないだろう。
…デルベスタの２回戦進出は確定だな。
フェイ・ウォルカにしてみれば物足りない結果かもしれないが勝利の二文字に偽りはない。
「これでとりあえずはまあ…」
トーナメント表が完成した。
…とは言え。
「初っ端からグランバニアはきついよな…。」
どう考えても必勝法なんて思い付かない。
…俺と御堂ともう一人か。
せめてもう一人確実な戦力がいれば、
それなりに作戦も考えられるんだが。
…難しいよな。
まずは鈴置と里沙と百花の３人の実力を再確認するために、
現段階で考えられる最良の組み合わせを試してみるしかないだろう。
少なくとも澤木京一に勝てるのは御堂しかいない。
俺では澤木京一と互角か少し下回る気がする。
…澤木京一がどれほど成長したのか今だに未知数だからな。
確実性を考えれば御堂が妥当だ。
…そして向こうの戦力は？
学園２位の盛長康平。
学園３位の筑紫美優。
学園４位の那岐知美。
学園５位の菊地英樹。
４人が主力として出てくるはず。
…そのうえでグランバニアの戦力とこちらの戦力を比較すれば、だ。
盛長康平には俺が当たるしかない。
白兵戦を主体とする盛長康平に運動を不得意とする鈴置や里沙では勝ち目がないからな。
百花と由香里は運動能力が高いとはいえ、そもそもの実力が低い。
…盛長康平とは俺が戦うしかないか。
よほどの成長でも果たしていない限りは十分にあしらえるはず。
…だが。
戦時中は全くの別行動だったからな。
グランバニアの生徒達に関する情報があまりないから、
盛長康平達が俺の予想を超える成長を果たしている可能性を捨て去ることが出来ない。
…でもまあ、それでもだ。
戦闘の技術や魔術の精度が進化しただけで戦い方そのものが変わっていないとすれば、
それぞれの実力に関しての推測は可能だ。
筑紫美優は明らかな後衛で白兵戦は不向きのはず。
魔術師としての実力がグランバニアで一番だとすれば油断は出来ないけどな。
…相性的には接近戦も遠距離戦も出来る百花をぶつけるのが妥当かもしれないが。
こちらの実力を確かめるという意味で鈴置をぶつけてみるのも良いかもしれない。
…一応、攻撃的？なルーンを所持してるしな。
扇という特殊な形が攻撃的かどうかは不明だが、
単純な打撃力は相手を一撃で昏倒させる破壊力があるはずだ。
…対『森下千夏』用の武器が筑紫美優にも通じるかどうかは知らないけどな。
それでも鈴置と筑紫美優なら相性が悪いということはないはず。
…特に相手が筑紫美優なら鈴置の魔法の精度も確認できるだろう。
相手が強力な魔術師であるからこそ、
鈴置の実力を探るには都合が良いはずだ。
…まあ、仮にここで鈴置が負けたとしても。
残る那岐知美と菊地英樹のどちらかを里沙か百花が撃破してくれれば２回戦には進出出来る。
…那岐知美には里沙。
…菊地英樹には百花が妥当か？
那岐知美も接近戦を得意としていないはず。
実力もあまり高くは評価できないからこそ里沙が妥当だと思う。
…確実な一勝が欲しいということもあるが。
接近戦を得意とする菊地英樹と里沙をぶつけても勝てる気がしなかった。
…完全な消去法だな。
接近戦を得意とする菊地英樹に百花をぶつけるとすれば、
必然的に那岐知美の相手は里沙になる。
…ただ。
単純に考えて百花と菊地英樹の実力は互角程度だろうからな。
場合によっては引き分ける可能性があるかもしれない。
そしてもしも百花が引き分けになると。
俺と御堂で２勝しても鈴置と里沙で２敗した場合に延長戦に突入することになる。
…姉貴の指令は完全に失敗になるよな。
圧勝を命じられているのに接戦では後々面倒なことになる気がする。
…里沙と百花が頑張ってくれないと痛い目をみるのは俺なんだよな。
里沙が自業自得で泣く前に俺が姉貴に泣かされることになるだろう。
…はぁ。
…しょうがないな。
…少し情報収集をしておくか。
グランバニアに関する情報を少しでも多く入手できればそれだけでも勝率が変化するはずだ。
…一度偵察に行ってみるか。
開会式が終わり次第すぐに偵察に出掛けようと考えていると。
「淳弥。」
不意に御堂が話し掛けてきた。
