初戦から
…次は澤木京一か。
抽選の順番が回ってきたことでクジ引きを始めた澤木京一は、
小さな箱から一枚の紙を取り出してから真剣な面持ちで紙に記された番号を確認している。
「…っ!?」
…ん?
…何だ?
番号を確認した瞬間に表情が変わったように見えた。
…何か問題でもあったのか?
まだ誰も知らない番号を見た澤木京一は苦笑いを浮かべながら係員に紙切れを差し出した。
そして。
「な、な、な、なんとっ!?」
突如として驚きをあらわにした係員も、
興奮気味にグランバニア魔導学園の番号を宣言した。
「ま、まさかの展開ですっ!!グランバニア魔導学園は2番を引きましたっ!!これでグランバニア魔導学園は初戦からジェノス魔導学園と戦うことになりますっ!!!」
…なっ!?
…何だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?
澤木京一が驚いた理由と係員が興奮する理由に気付かされたことで、
俺も驚く以外の行動がとれなかった。
「初戦からグランバニア魔導学園だとっ!?」
予想外としか言いようのない展開だった。
これまでなら決勝戦でぶつかり合うのが通例になっていたはずなのに、
グランバニア魔導学園との決戦が今回は初戦で行われることになってしまったらしい。
…冗談だろ?
「一体、誰がこのような展開を予想していたでしょうか!?ジェノス魔導学園が年間制覇へたどり着くための初戦の相手がグランバニア魔導学園になってしまいました!もはや決勝戦同然とも言える注目すべき試合の結末はどちらの学園の勝利で終わるのか!?今大会はいままで以上に興味深い大会になってきましたー!!」
抽選の結果によって興奮したままで大会を盛り上げる係員の言葉に煽られた会場全体の熱気が高まっていく中で、
抽選を終えてから帰ってきた御堂も苦笑しているようだった。
「まさかこんなに早く戦うことになるとは思っていなかったよね。」
…いやいや。
「いくらなんでもくじ運が悪すぎるだろ!」
「は、はは…っ。そうだね。でもまあ、たまにはこういうこともあるのかな?」
…たまには、って。
…どうして俺がいる時に限ってこんなことになるんだ!?
「って、言うか、いきなり決勝戦じゃねえかっ!!」
「あははは…っ。そ、そうだよね。」
もはや笑うしかない状況に開き直っている感じの御堂だが、
それでも笑顔は引き攣っていて笑い声は渇ききっている。
…これはさすがに御堂でさえも予想外の出来事ってことだよな。
今回以外の大会ならどんな抽選結果だろうとどうでも良いと思うものの。
俺が参加する大会で初戦からグランバニア魔導学園は厳し過ぎる展開だった。
「それにしても、あえてグランバニアとぶつかるか?」
初戦でグランバニアとぶつかり。
2回戦でエスティアとぶつかる。
そんな抽選結果に少なからず嫌気がさしてくる。
「強豪だらけじゃねえかっ!」
これ以上ない最悪の展開と感じる俺の視線の先で、
澤木京一の次に並んでいるシェリル・カウアーもクジ引きを開始したようだった。




