運命じみた何か
…まさか1番を引くとはな。
抽選である以上は何番を引いたとしても不思議ではないものの。
1番という数字には運命じみた何かを感じなくもない。
…1回戦の相手がどこの学園になるかはまだ分からないが。
…順当に進めば2回戦はエスティア魔術学園とぶつかるってことだよな。
1番を引いたジェノスと4番を引いエスティアは1回戦を突破すれば2回戦でぶつかり合うことになる。
「まずは一つ目の強豪だな。」
「「「………。」」」
ジェノス魔導学園の名前が記されたトーナメント表を眺めながら呟いた俺の言葉を聞いていた鈴置や百花と由香里は真剣な表情で頷いてくれている。
…それなのに。
「エスティアの実力なんて、上矢遥以外はそこそこでしょ?どう考えても楽勝じゃない。」
何故か里沙だけは楽観的な考えでジェノスの勝利を断言していた。
「そんなに怯えるほどの相手じゃないでしょ?」
…いやいや。
強気な態度を見せるのは里沙の勝手と言うか好きにすれば良いと思うのだが、
間違ってもエスティアの連中には聞かれたくない発言だった。
「あのな、里沙。あまりそういう発言は良くないと思うぞ?それにエスティアは里沙が思ってるほど楽な相手なんかじゃない。学園2位の笹倉美和子が戦争で倒れたとはいえ、禁呪を受け継いだ連中の実力は俺達と互角と考えて間違いないからな。」
「え~?互角~?そうは思えないけどね~。」
………。
俺の説得は通じずに、
里沙は自分の判断で俺の言葉を聞き流していた。
「私は負ける気がしないわ。」
…だろうな。
どこまでも強気な態度で自分の勝利を信じる里沙にこれ以上の説得は不可能だと分かっている。
…まあ、里沙の意見はどうでもいい。
実際に戦えばどちらの判断が正しいかなんてすぐに理解できるはずだからな。
「仮に里沙は勝てるとしても、百花や由香里には荷が重いかもしれないだろ?」
あるいは鈴置でさえも対戦相手との相性次第では敗北の危険性がある。
…俺と御堂で2勝しても、あと一人足りないんだよな。
里沙が宣言通りに勝利してくれれば何の問題もないのだが、
自信過剰は油断を招くことになる。
…って言うか、激しく期待出来ねえ。
実際に里沙がどの程度まで役に立つのか?
現時点では判断できないが、
あまり調子にのっているといつか必ず痛い思いをするだろう。
…里沙はおまけだと考えておくのが無難だな。
まずは鈴置に期待して、
里沙には滑り止め程度の期待だけをしておこうと思う。
…あとは百花と由香里が引き分けに持ち込んで敗北を回避してくれれば少しは気が楽になるか。
共和国が危険だと判断している禁呪を相手にして、
どこまで戦えるのか不安に思う部分はあるものの。
無理に勝てなくても引き分けてくれれば文句はないからな。
…とりあえずは1回戦の相手がどこの学園になるかが一番重要な部分だよな。
まず考えるべきはどこの学園が2番を引き当てるかだ。
その結果を知るために抽選の続きへと視線を戻した瞬間に、
御堂の後方で順番を待っていた澤木京一が抽選を始めたようだった。




