ここまで来て
そうして米倉宗一郎の話が終わって8時30分を過ぎた頃。
ついに運命の時がやって来た。
「それではただいまより各学園の試合順を決めたいと思います。」
米倉宗一郎の代わりに大会進行役の係員が壇上に上がったことで各学園からざわめきが生まれ始める。
…ようやく抽選か。
壇上の側に運ばれた巨大な掲示板には、
まだどの学園の名前も記されていない真っさらなトーナメント表が貼付けられていた。
…問題はここからだな。
「どこの学園とぶつかるのか…。運命の瞬間ってやつだよな。」
抽選の結果によって俺の負担が大きく変わってしまうからだ。
「出来れば弱そうな所と当たりたいよな。」
「うわっ、しょぼっ!」
素直に思ったことを言葉にしてみると、
すぐ傍にいる里沙に全力で馬鹿にされてしまった。
「ここまで来て弱い者イジメがしたいなんて、ダサすぎっ!」
…いやいや、いやいや。
そこまで言われるほどのことを言ったか?
「言い過ぎじゃねえか?」
「だって本当のことじゃない。」
…はぁ?
…そうか?
「だいたいね~。優勝を目指そうっていう学園がそんな弱気でどうするのよ?」
…いや、まあ、それはそうなんだが。
「やるからには全戦全勝!完璧無比な結果を勝ち取る!それが私達の目的に決まってるじゃないっ!!」
………。
…これはまあ、あれだよな。
周囲に他の学園が集まっているにも関わらず。
堂々と完全制覇を宣言する里沙の根性は素直に認めようと思う。
それだけ言い切れればさぞかし気分が良いだろうからな。
…ただ、な。
今の里沙の一言で間違いなく俺達は敵として認識されてしまったはずだ。
…周囲からの視線が痛すぎるぞ。
明らかに敵意を示す視線が俺達に集中している。
「一瞬にして殺気立ったな。」
瞳に怒りを示す連中が里沙を全力で睨みつけているからだ。
「百花、由香里、お前らちょっと里沙を保護しておけ。」
「ええ。」
「そうね。」
「………。」
これ以上の暴言が吐き出される前に里沙の発言を封じようとしたことで里沙が俺を睨みつけてくるが、
百花と由香里が左右を塞いでくれたことで大人しく黙ってくれたようだった。
「これ以上周りを刺激しないように抑えておけよ。」
「任せておいて。」
「………。」
再び指示を出す俺に由香里は素直に頷いてくれたが、
百花は返事すらしなかった。
…百花の場合は本気で里沙を保護してるつもりだろうな。
里沙の口を封じるためではなくて、
周囲からの敵意を断ち切るために動いたんだろうな。
…まあ、里沙が黙ってくれるなら何でも良いが。
俺や里沙だけならともかく、
ジェノス全員が敵対視されるのは避けたいところだった。
「とりあえず里沙が静かにしてる間に抽選を進めようぜ。」
「ああ。」
「…そうね。」
あまりここには長くいたくないと思っていると。
御堂と鈴置も同じ気持ちだったのか、
苦笑いを浮かべながら何度も頷いてくれていた。




