性格の違い
…よしよし。
さすがに食事の間だけは平和だな。
朝食が始まってからすでに10分ほど過ぎているが、
俺の心を蝕むような出来事はまだ起きていなかった。
…特に鈴置には感謝だな。
俺が席についてからすぐに隣に座ってくれた鈴置のおかげで、
里沙が離れた席に座ってくれたからだ。
…メシくらいはゆっくり食いたいよな。
御堂、里沙、百花。
俺、鈴置、由香里の順番で席に着いているのだが。
昨日の夕食は俺と里沙が隣同士になってしまったためにひたすら騒がしかった。
その面倒臭さを回避するためだろう。
鈴置が俺の隣を塞いでくれたおかげで、
里沙の暴走はひとまず収まっている。
…良い女だよな。
気が利くというか。
空気が読めるというか。
性格こそ違うものの。
翔子と比べても見劣りしない女だと思う。
だからもしも鈴置のような女を彼女に出来れば幸せな人生は確実だろうな。
…ただ。
鈴置はどちらかと言えば俺達というよりも天城総魔寄りの立ち位置だからな。
御堂に対しても中立という態度を見せている。
…現時点で鈴置が心を開いているのは天城総魔だけか?
鈴置にしてみれば天城総魔の生存はまだ何も知らない出来事だが、
もしも天城総魔が生きていると知れば俺達よりも天城総魔と共にいることを選ぶだろう。
…だとすれば、だ。
翔子にしても。
鈴置にしても。
良い女はみんな天城総魔寄りにいる気がする。
…だからと言って、鈴置を手に入れたいかと問われれば、そうでもないとしか言えないんだよな。
良い女なのは認めるが、
俺の理想からは外れていると思うからだ。
…翔子の場合は怒っても可愛らしいと思うが。
…鈴置の場合はマジで怖いからな。
その差が性格の違いなのかもしれない。
…それでもまあ。
…羨ましい限りだよな。
天城総魔を羨ましいと思う気持ちは俺にもある。
…とは言え。
羨ましいとは言っても、
それは男としてじゃない。
好意という意味よりも環境と言うべきか。
…俺は確実に女難の相が出てるからな。
どれだけ思い返してみても、
これまでまともな女と関わったことがほとんどない。
意味不明に絡んで来る里沙や、
暴走超特急の姉貴のような理不尽な奴らばかりが俺の周りに集まっているからだ。
…はぁ。
…俺も良い女に好意を持たれたい。
せめて高圧的な態度をとらない普通の女と関わりたいと願う。
…雪はまともだが、あの姉貴が保護してるからな。
今まではあまり雪と関わることも出来なかった。
…それでも。
これからは雪と共にジェノスで暮らすことが出来るはずだ。
…唯一の安らぎだよな。
何度も考えてしまう。
そして今の現実を感じて虚しさを感じてしまう。
…早く自由になりたい。
ただそれだけを願いながら、
僅かな朝食の時間に心と体を休めることにした。




