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THE WORLD  作者: SEASONS
5月13日
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隠し事が減った

…ふぅ。



姉貴達と別れてから3階まで戻ってみると。


通路の各所にある時計の針がすでに6時を指そうとしていた。



「なんだかんだで1時間近く話をしてたんだな。」



無駄な時間だったとは思わないが、

精神的な疲労が蓄積していく出来事だった。



「マジで姉貴の性格だけは何とかしてほしいよな。」



今でこそこうして不満を口に出すことが出来るが、

姉貴達に関しては少し前まで極秘事項だったこともあってどんな些細な情報も漏らすわけにはいかなかった。


それが今では姉貴がウィッチクイーンであることや竜崎慶太が竜の牙という情報が知られているおかげで誰かに聞かれても困ることはなくなっている。



「隠し事が減ったっていう部分だけは少し気が楽になったかもな。」



俺の過去や素性が御堂達に知られたのは結果的に良かったと思う。



…その過程が色々と複雑だったけどな。



戦争という最悪の状況の中で危うく裏切り者として処分されそうな危機にいた事実を忘れるわけにはいかない。



「どこかで一歩間違えていたら、冗談抜きで殺されていても仕方がない状況だったからな。」



結果的に米倉宗一郎が話の分かる人間だったから良かったものの。


普通なら不審者と判断された俺を信じようとはしなかっただろう。



…俺の扱いに関しては運が良かったとしか思えないな。



元とは言え竜の牙という素性を知ってもまだ仲間として受け入れてくれた米倉宗一郎の配慮には感謝すべきだと思っている。



「こうしてここにいられるのは米倉宗一郎のおかげだな。」



俺にとっては監視の対象だったのだが、

現在ではもうその役目は存在していないようだ。



…終わりってやつは本当に突然訪れるんだな。



ジェノスに移住してから今日まで、

何年もの月日を費やして続けていた任務が天城総魔の手によって終わったらしい。



…それだけは感謝するべきか?



俺の負担を減らしてくれたことは感謝するべきかもしれない。



…だが。



「感謝はするが、これまでの俺の努力は全て水の泡だよな。」



秘宝を手に入れられなければ結局全てが無意味だったと思うからだ。


必死に努力していた日々が何だったのかと思う気持ちが残ってしまう。



…でもまあ仕方がないか。



過ぎたことを考えてもどうにもならない。


すでに秘宝は天城総魔の手に渡っていて、

俺達が手出しできない状況にあるようだからな。



だからこそ秘宝はもう安全だという考え方には賛同できるんだが、

出し抜かれた事実だけは素直に悔しいと思ってしまう。



…でもまあ、極論すれば俺達は別に秘宝が欲しかったわけじゃないからな。



手に入れられなくても悔しがる必要はないはずだ。



少なくとも俺達としては竜の牙に秘宝が奪われなければそれで良かった。


米倉宗一郎が暗殺されて秘宝が奪われるような緊急事態さえ回避できればそれで良かったんだ。



…だからこその監視だからな。



略奪を目的としていないからこそ、

米倉宗一郎の信頼を勝ち取ることが出来たのだと思う。



…その辺りの出来事も運命の歯車ってやつなのかもしれないな。



何もかも運命という言葉で片付けてしまうのはあまり気持ちの良い考え方だとは思わないが、

それでも運命は存在すると思っている。



「翔子と出会ったことは運命だと思っていたいからな。」



それくらいの気持ちはあっても良いはずだ。



…まあ、誰にも言えないけどな。



御堂はともかく、里沙達には絶対に言えない。


笑われるどころか、からかわれて馬鹿にされるのは目に見えているからだ。



「里沙のタチの悪さは姉貴以上だからな。」



翔子のことを知っているだけに余計にタチが悪い。



「里沙の前で翔子の名前は絶対に口に出来ないよな。」



自分から墓穴を掘るようなことはしたくない。



…とりあえずは黙っているのが一番か。



部屋に戻れば確実にいるはずの里沙とは極力関わらないように徹しよう。



…あまり里沙と関わらないように距離をとっておくか。



その程度の努力で里沙の暴走は回避できないが、

それでも被害は最小限に抑えられるはずだ。



…はぁ。



「どこに行っても心労が絶えないな。」



何かも面倒になって投げ出したくなることもあるが、

あと少しの辛抱だと思えば堪え凌げるとは思う。



「とりあえず戻るか。」



激しくため息を吐きながら足を止めた俺は目の前の扉に視線を向けることにした。


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