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自分の目を疑うだろう
「とりあえずは一旦、落ち着こうか。」
姉貴の肩に手を置いた慶太が俺から姉貴を引き離してくれた。
そして離れた二人と入れ代わりに雪が駆け寄ってくる。
「おはよう、淳弥君♪」
「ああ、おはよう。雪は今日も可愛いな。」
「えっ?そ、そうかな~?えへへっ。ありがとう、淳弥君。」
…ははっ。
可愛いと褒めたことで喜んでくれたようだ。
面倒な姉貴と比べると、
雪は本当に天使のように可愛く見えてくる。
…どうせなら雪のような姉貴が欲しかったな。
優しくて可愛くて。
そんな姉貴ならとは思うものの。
…考えれば考えるほど虚しくなってくるよな。
どんなに望んでも目の前の姉貴の性格は絶対に変わらないからだ。
…と言うか、優しい姉貴なんて想像さえ出来ないぞ。
もしもあの姉貴が優しくなったとしたら?
俺は間違いなく自分の目を疑うだろう。
そして現実を否定してこの世界から目を背けるかもしれない。
…それくらい有り得ない。
だから余計な期待は持たないことにした。




