悔いがあるとすれば
「これまでの幾つもの争いの中で、悲しい想いは数え切れないほど経験してきた。」
…総魔さん。
「俺もまだ知らない過去の出来事によって、偽りの栄光ではない本当に守りたいと思える者達と出会うことが出来たのだ。だから今の人生に悔いはない。」
苦労をしてきたからこそ、
今の総魔さんがあると考えているようですね。
「だが、もしも一つだけ悔いがあるとすれば…。それは俺自身の弱さに対してだけだ。」
………。
「弱さか…。きみほどの男でも自らの力に満足できないのだな。」
「俺にもっと力があれば、世界を敵に回してでも戦い抜ける力があれば、守れた命があったはずだ。翔子も…美由紀も…沙織も…誰も死なせずに済んだかもしれない。」
…それはっ!
それは違います。
決して総魔さんの責任ではありません。
「それは多くを望みすぎだろう。人の手で守れる範囲には限りがある。きみ一人で全てを守れるわけではない。」
…そうです。
戦争に参加したのは私達自身が決めたことだから。
例えどんな結果になったとしても、
総魔さんが責任を感じる必要はないんです。
「望むべき全ての命を守り抜くなど到底出来ることではない。それこそ、神にでもならなければ叶えられない理想だ。」
「…だとすれば、たどり着いてみせるだけだ。」
「………。」
「この世界を覆うに足りる力を手に入れるためになら、俺は『神』にでも『悪魔』にでもなってみせる。」
…総魔さん。
神にでも悪魔にでもと宣言した総魔さんの言葉には狂気じみた気迫が感じられました。
…そうやってどこまでも。
…どこまでも歩み続けるんですね。
自らを犠牲にして。
自らを追い込んで。
それでもまだ更なる高みを目指して歩き続けようとしているんです。
…終わりのない戦いに、どこまでも進んでいくんですね。
誰かを守るために。
誰かを救うために。
死を迎える瞬間まで永遠に戦い続ける覚悟を示しているんです。
…だからこそ。
だからこそ私も同じ道を歩こうと思っています。
…決して一人にはしません。
総魔さんを一人にはさせません。
…きっとこの想いは、栗原さんも同じですよね。
おそらく栗原さんも私と同じ考えを持っていると思います。
誰よりも尊敬する総魔さんのために。
総魔さんと一緒に闇の世界を歩む覚悟を心に秘めているはずです。
…だから。
だから私達で総魔さんを守り抜くつもりでいます。
私と栗原さんの二人で総魔さんを守り続けます。
この命と。
この体と。
この想いに懸けて。
…永遠に守ります。
そしてただそれだけを。
…今は誓います。




