連絡をとって
窓から差し込む陽の光と魔力で点るランプの明かりが室内を照らし出す薄暗い控室の中で、
総魔さんは入口の扉を見渡せる席に腰を下ろしました。
「優奈も休んでおけ。もうすぐ米倉宗一郎が来るはずだからな。」
…え?
「ここへ来られるんですか?」
「ああ、そうだ。すでに薫に連絡をとって米倉宗一郎をここへ連れて来るように指示を出してある。」
…あ!
…なるほど。
「そういうことですか。」
だからここで待っていれば米倉さんから会いに来てくれるということです。
「二人ともすぐに来られるのでしょうか?」
「どうだろうな。薫はすぐに連れて来ると言っていたが、ここまで来た以上はジタバタしても仕方がない。向こうから来るまで待つしかないだろう。」
…あ、はい。
…そうですね。
総魔さんの説明を聞きながら栗原さんと米倉宗一郎さんの行動を調査してみると、
二人は一緒に行動しているようでした。
…魔力の波動を変換しているせいで直接探知するのは難しいですけど。
…秘宝があるので調査には困りませんね。
魔力を封じている状態なので戦闘は出来ませんが、
それでも秘宝は今まで通りに使えます。
…だから。
今の私は魔術による攻撃を受けると普通に直撃すると思います。
特性も魔術も全て封じていますので、
正体がばれない代わりに一切魔術が使えないからです。
それでも総魔さんがすぐ傍にいてくれますので不安を感じることはありません。
…私は安全です。
世界一安全な場所にいるからです。
周りを恐れる必要なんてありません。
…そもそもここには敵と呼べる人はいないんですけどね。
現時点で敵対関係にあるのは竜道寺清隆さんだけです。
その竜道寺さんも現在は大陸南部にはいないようです。
…もっと秘宝を使いこなせれば大陸の中部や北部も調査できると思うんですけど。
大陸の最南端と言える共和国から世界中を調査するのは今の私ではまだ力不足でした。
…もう少し秘宝に慣れてからでないとムリそうですね。
2、3日で使いこなせるほど簡単なモノではありません。
…完璧に使いこなせるようになるまでには年単位の努力が必要でしょうか。
秘宝からは何も教えてはくれません。
自分自身の力で使い方を考えるしか方法はないみたいです。
…これも想像力の戦いですね。
魔術も同じですが、
どんな力も使い方次第で結果が大きく変わってしまいます。
…少しずつ学んでいくしかありませんよね。
もっと上手く使うための方法を考えながら、
米倉さんと栗原さんの到着を待つことにしました。




