二カ所
「これからどうするんですか?」
「まずは人気のない場所に移動する。」
…人気のない場所?
…どこでしょうか?
「どこへ行きますか?」
「俺達にとっての始まりの地だ。」
…始まりの地?
…と言うことは。
言葉の意味をそのまま考えると思い当たる場所が『二カ所』あります。
ですが、一カ所は行けません。
3階にある宿泊用の部屋には御堂先輩達が来る可能性があるからです。
…だから。
考えられる場所は一つしかありません。
「大会の控室ですね。」
一ヶ月前のあの日。
総魔さんと米倉宗一郎さんが初めて話し合ったあの部屋なら誰も来ることはないはずです。
大会が開催されるまでは使用されないはずなので、
あの部屋なら身を潜めるには好都合だと思います。
「ジェノスの控室ですね。」
「ああ、そうだ。俺にとっても…優奈にとっても…思い出の場所と言えるだろう。」
…ええ、そうですね。
姿を消した総魔さんを捜して翔子先輩と二人で会場の各地を探索していたあの時に、
控室にいた総魔さんと米倉宗一郎さんの会話を聞いてしまったからです。
…盗み聞きをした部屋ですから。
そう考えるとすごく行きにくい場所なのですが、
今回は盗み聞きではなくて参加者の一人です。
「あの時はすみませんでした。」
「いや、気にするな。」
改めて謝罪したのですが、
総魔さんは私を咎めずに控室に向かって歩きだしました。




