生まれた町
…あっ!
お昼を過ぎて午後2時を迎える頃。
黙々と街道を歩き続けた私達はついにグランバニアの町が見渡せる距離までたどり着きました。
「町が見えますよ!」
草原を突き抜ける街道の先に見覚えのある建物が並んでいます。
「グランバニアの魔導学園とグランパレスです!」
グランバニアの町を象徴する巨大な二つの建物がはっきりと確認できました。
「あと少しで到着ですよね。」
「ああ、そうだな。」
「はいっ!」
国境を越えたことよりも。
カリーナを通り過ぎたことよりも。
グランバニアにたどり着いたことが。
共和国にいるという事実を何よりも強く実感させてくれました。
「ついに共和国の中心まで戻ってきたんですね。」
共和国の首都であるグランバニアの町が目の前にあるんです。
…この町は、私にとっても思い出の町です。
私の奇跡はこの町から動き始めたからです。
「ねえ、ミルク。覚えてる?この町でミルクと再会したんだよ。」
グランバニアの町で。
グランパレスの中で。
魔術大会の会場で。
ミルクと再会したんです。
「この町がミルクの生まれた町なんだよ。」
掛け替えのない親友で大切な家族のミルクはこの町で生まれました。
「ねえ。ミルクは覚えてるかな?」
あの時の出来事を。
あの瞬間の喜びを。
「ミルクは覚えてる?」
肩の上で体を休めているミルクに問い掛けてみると。
「みゃ~っ♪」
ミルクはいつもと同じように元気な声で鳴いてくれました。
「うん。そうだよね。私も忘れてないよ。」
「みゃ~っ♪」
肩の上で体を休めながら私の頬にほお擦りしてくれるミルクの温もりが何よりも愛おしく感じます。
「これからもずっと一緒だよ。」
「みゃ~っ♪」
「うん!」
私を愛して懐いてくれるミルクの存在が今の私の心の支えです。
…総魔さんがいて、ミルクがいてくれたら。
ただそれだけで幸せです。
「もうすぐ行けるからね。ミルクが生まれたあの場所に、もうすぐたどり着けるからね。」
「みゃ~っ♪」
私の言葉の一つ一つに可愛く返事をしてくれるミルクの頭をそっと撫でながら、
総魔さんと一緒にグランバニアに向かって歩みを進めました。




