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恩返し
…ん~。
「この辺りでも良いですか?」
「ああ、どこでもいい。」
…あ、はい。
注文を終えたあとで適当に空いている席を選ぶと、
総魔さんがテーブルの上に二つの定食を置いてくれました。
「ありがとうございます。」
「気にするな。優奈には世話になったからな。」
「い、いえ…。そんな…。」
現状でお世話になっているのは私なのでちょっぴり申し訳ないと思います。
…それに。
竜崎さん達の砦にいた頃は必要なものを全て用意していただいていたので、
私が何かをしたということは特に何もありません。
「私は何も…。」
「動けない俺の介護をしてくれていただろう?それだけで十分だ。」
…それは、その~。
…はい。
ちゃんと出来ていたかどうかは分かりませんが、
私にできる精一杯のことはさせていただいたつもりです。
「今はその恩返しだと思ってくれればいい。」
………。
総魔さんは恩返しだと言ってくれましたが、
それを言い出すなら私も返したいと思う恩が沢山あります。
それこそ言葉では言い尽くせないほどの恩を感じているつもりです。
…なのに。
「優奈には感謝している。」
総魔さんは私に感謝してくれていました。




