追跡に失敗
「追跡に失敗しました。」
秘宝による追跡を振り切った矢島さんは、
そのまま完全に行方をくらましてどこかへ消えてしまったんです。
「魔力の波動を追えないので、これ以上の追跡は出来そうにありません。」
「そうか。」
「はい。」
探知も追跡も出来ないまま、
矢島さんの存在は闇と共に消え去りました。
「それに矢島さんは私が追跡していることに気付いたようでした。」
「上には上がいるということだな。」
…はい。
…そうですね。
長距離からの追跡にも気付いて妨害してきた矢島さんには勝てる気がしません。
少なくとも私が秘宝を完全に使いこなせるようにならない限り二度と追跡できないと思います。
「すごい人がいるんですね。」
「お互いの存在を知らなくて良かったな。もしも知っていれば俺達の存在が露呈していたかもしれない。」
…そ、そうですね。
その可能性を考えるのを忘れていました。
「だ、大丈夫でしょうか?」
「おそらく心配ない。問題を起こすつもりがあるのなら別の手段をとっているだろう。それにあくまでも妨害に留めて姿を隠している以上は向こうも表舞台に出てこれない事情があるはずだ。」
…あ~、そうかもしれませんね。
矢島さんも姿を隠しているのなら、
私達のことを誰かに話す可能性は低いはずです。
「大丈夫だと信じるしかないですよね。」
「ああ、そうだな。今はこれ以上の接触を避けるべきだろう。」
「はい。追跡は諦めます。」
無理に深追いをして対立するのはあまり都合が良くないです。
私達も矢島さんもお互いに姿を隠さなければいけない立場のようなので、
今は干渉しない方が安全だと思います。
「とりあえず移動しましょう。」
このままここにいても仕方がありませんので、
旅館でいただいた地図を頼りに魔術師ギルドに向かうことにしました。
「旅館で宿泊できる場所を聞いてきましたので案内しますね。」
「ああ、頼む。」
素直について来てくれる総魔さんを先導しながら、
ひとまずギルドに向かって移動することにしました。




