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THE WORLD  作者: SEASONS
5月11日
3871/4820

再任

「…と言うわけで、今月も魔術大会が開催されることが決まったから、マールグリナ医術学園としては医療班を編成してグランパレスに送らなければいけないんだけど。現時点でどの程度の人数が集まりそうか分かる?」



…あ~。


…ついに大会の開催が決定したんですね。



生徒会室の内部を覗き込んだ丁度その時に、

栗原さんは魔術大会が開催されることを宣言してから生徒会の方々に質問していました。



「いつもなら総勢で100名くらいだけど。今回もそれだけ集められるの?」



学園の現状や町の状況に赤十字軍の状況まで考慮した上で、

栗原さんは皆さんに質問を行っているようでした。



…ですが。



今回は上手く人が集められないようですね。



「残念ですが100は無理だと思います。」


「…やっぱり?」


「はい。すでにマールグリナに所属する魔術医師の多くは各町の復興に協力するために出払っていますし。戦時中に強襲を受けたせいでかなりの死者も出ています。」


「…でしょうね。」


「はい。それに学園に所属している見習い魔術医師では即戦力としては期待できませんし。大会での医療部隊としては頭数にもならないと思います。」


「まあ、そうでしょうけど。それで、どの程度なら集められるの?」


「主要人員の生徒会長達が大会に参戦するために医療部隊から外れるとすると…。まともに動けるのは多くても50人程度だと思われます。」


「多くても半分なのね…。」


「ええ、そうです。多く見積もっての頭数になります。実際には50名さえ集められない可能性が十分にありますので。」


「そこまで逼迫した状況なの?」


「戦後と言う理由もありますが、旧セルビナや旧ミッドガルムにも人員を送り込んで医療活動を行っていますので、正直な話を言うと完全に人手不足です。この町に残っている僅かな魔術医師を総動員しても50名が限界です。その以上の人員を割いてしまうと、この町の医療機関が停止してしまいます。」



…うわぁ。


…大変ですね。



「はぁ…。それは困るわね。…って言うか、戦時中もそうだけど。戦後も忙しいのってうちだけじゃない?他の町は自分の所の復興に集中できるけど。マールグリナは医師を派遣して慈善事業をしてるから自分達の町の復興が遅れてるっていう辺りが複雑な心境よね…。」


「それは誰もが感じていると思いますが、そういう役目を持った町なので仕方がないかと…。」


「まあ、ね。愚痴を言っても仕方がないんだけど、もう少し人手が欲しいわよね~。」


「そこに関しては同意見ですが、ないものをねだっても仕方がないので小数の医療部隊でも満足してもらえるように上層部を説得する方法を考えてください。」


「…いやいや、そんなの無理でしょ?納得してらえるわけがないじゃない。」


「そこが生徒会長の腕の見せ所じゃないですか。」


「うっわ。面倒臭さっ。」


「…だと思いますが、自分で立候補したんですから自分で責任を果たしてください。」


「ちょっ!?別に好きで立候補したわけじゃないわよっ!!」


「その言い訳はもう聞き飽きました。愚痴っても喚いても、現在は栗原さんが生徒会長なので、ご自分の役目を果たしてください。」


「あ・の・馬・鹿・兄・貴ぃ~!余計な仕事を~っ!!!」


「死者に愚痴るのは配慮に欠けます。速やかに学園長と話し合って派遣の手続きを行って下さい。」


「くっ!簡単に言ってくれるわねぇ!!」


「それが役目ですから。」


「だったら今日から貴女が生徒会長を代わりなさいっ!」


「それは無理です。」


「どうしてよ!?」


「私はそんな面倒な役割はごめんです。生徒会の一員としての職務は果たしますが、それ以上はお断りいたします。」


「だったら、他の…っ!!!」


「「「「「………。」」」」」



他の誰かに生徒会長を押し付けるために視線を泳がせた瞬間に、

全員が一斉に栗原さんから視線を逸らしていました。



「くぅっ!!」


「………。」



誰も引き受けてくれない沈黙の中で、

先程の女子生徒が栗原さんに勝ち誇った笑みを向けているのが見えました。



「おめでとうございます。満場一致で栗原さんが生徒会長に再任されました。」


「嬉しくないし!おめでたくもないわよ!!」


「いえいえ。残念ですが、私達としてはお兄さんの意思を無下にすることは出来ません。どうしても妹に生徒会長をさせたいというお優しい想いを尊重して、本当は生徒会長をやりたいという気持ちを心の中に秘めながら、渋々栗原さんにお仕事をお任せしてるのですから。」


「はぁ!?顔が笑ってるし!全然気持ちがこもってないし!めちゃめちゃ嬉しそうな顔でふざけたことを言うんじゃないわよっ!!!」


「はぁ…。もう良いから黙ってさっさと行ってください。」


「くっ!帰ってきたら絶対に泣かすっ!!!」


「はいはい。その前にやるべきことはしてくださいね。」


「くぅぅぅぅっ!!!分かったわよ!やればいいんでしょ!やれば~!!」



にっこりと微笑みながら仕事を押し付ける女子生徒に全力で怒鳴った栗原さんは、

トボトボと生徒会室を出て行ってしまいました。


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