緊張しますね
警備の方々が待機していた詰め所を突破した私と総魔さんは、
幾つもの牢獄が並ぶ地下通路を5分ほど進み続けました。
「もうすぐ最深部です。」
私の意識はすでに『あの人』の姿を捉えています。
「あと1分ほどで到着します。」
もうすぐ会えるんです。
総魔さんが捜し求めていたあの人とようやく話し合うことが出来るんです。
「少し緊張しますね。」
「そうか?恐れる必要はないだろう。俺達は俺達の役目を果たすだけだ。ただそれだけのことだからな。」
…え、ええ。
…それはまあ、そうなのかもしれませんけど。
それでも私は緊張してしまいます。
…なので、交渉は総魔さんにお任せします。
私では上手くお話することさえ出来ないと思うので。
「私は何もしないほうが良いですよね?」
念のために確認しておきました。
「邪魔にならないように様子を見ていればいいですか?」
「どうだろうな。九鬼穂乃華の召喚時には協力してもらう必要があるが、それ以外に関してはあの男の動向を見てからの判断になる。」
…あ、はい。
…分かりました。
この通路の先にいるあの人がどうするかによって私の役割が変わるようです。
「だとしたら、やっぱり緊張します。」
「ふっ。優奈らしいな。」
「す、すみません…。」
「いや、良いんだ。それよりも…時間だ。」
…えっ?
総魔さんの言葉に戸惑いを感じながら視線を動かしてみると。
…あっ!
私達はすでに目的の牢獄のすぐ傍にまで近付いていたようでした。




