力には力を
…う~ん。
王都に着いてから1時間ほど進んだ先で、
ついに王城の跡地にたどり着きました。
…ですが。
「何もありませんね。」
王都内部の位置関係を考えれば、
王城の跡地はここで間違いないはずです。
…だけど。
大破壊の中心になった王城の周辺だけは残骸さえ見つけられないほど、
全てが綺麗に失われているようでした。
…何もかも消えてしまったんですね。
ここに王城があったことさえも疑わしく思えるほど何もないんです。
…大地がえぐれるほどの破壊だったようですね。
アストリア王国と比べればかなり小さな規模ですが、
もしもアストリア王国と同等の大破壊が起きていたとしたら?
ミッドガルムは消失して、
私や総魔さんも死んでいたかもしれません。
「運が良かったと言うべきかどうか複雑ですね。」
王都は消失しましたが、私達は生きています。
その事実だけは喜ぶべきだと思うのですが。
この地の惨状を見てしまうと素直には喜べませんでした。
…何十万人もの命が失われてしまったんですよね。
良い人もそうでない人も全ての命が平等に失われてしまったんです。
…これが兵器の力なんですね。
何度兵器の力を目にしても慣れることはありません。
…これがこの世界の現実なんですよね。
力には力を。
ただそれだけを望み続けた世界が生み出した究極の悪夢。
神の裁きという名前の悪夢は悲しい現実だけを残して、
ひとまずミッドガルムからは消失しました。
ですが、まだ終わりではありません。
二度と兵器が発動しない世界を作り上げなければ、
いずれまた世界は悲しみに包まれてしまうからです。
「そう言えば、五十鈴菜々子さんはどうしているのでしょうか?」
兵器を開発した五十鈴菜々子さんの行方を知りません。
「今はどこでどうしているのでしょうか?」
「どうだろうな。気になるのなら調べて見れば良い。だが今は九鬼穂乃華の魂の捜索が最優先だ。」
…あ、はい。
「そうですね。」
確かにその通りです。
今は他の人のことに気にかけている余裕なんてありません。
「九鬼穂乃華さんの魂を捜索しますね。」
この近辺に存在していると信じて、
九鬼穂乃華さんの捜索を続けることにしました。




