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THE WORLD  作者: SEASONS
5月9日
3811/4820

想い出の地

竜崎さんから秘宝と水晶玉を受けとったあとで、

総魔さんと私は砦の外まで移動しました。



「そろそろ夕暮れですね。」


「ああ、少し懐かしいな。」



…ええ、そうですね。



すでに午後6時を過ぎて夜が近付く時刻です。


夕焼けの空が徐々にですが暗くなってきています。



「こうして外に出るのは久し振りですよね。」


「ああ、そうだな。」



空を見上げる私と総魔さんですが周囲には誰もいません。


竜崎さん達はまだ砦の地下に残っているようで近くにいないからです。



「もうすぐ夜になりますね。」



これからどこへ向かうのかは知りませんが、

どこへ向かうにしても夜になってしまうと思います。



「これからどこに向かうんですか?」



素朴な疑問を問い掛けてみると、

総魔さんは一言だけ答えてくれました。



「終焉の地だ。」



終焉しゅうえん



それがどこなのかはすぐに気付きました。



…もう一度、あの場所に向かうんですね。



一つの物語の終わりでもあり、

新たな物語の始まりとも言える想い出の地に向かうつもりのようでした。



「行けますか?」


「ああ、問題ない。」



………。


…総魔さん。



少し不謹慎かもしれませんが、

総魔さんの言葉がすごく懐かしく思えました。



…総魔さんらしい言葉ですよね。



問題ないの一言がすごく頼もしく感じられるからです。



…ずっと聞きたい言葉でした。



その一言さえ聞ければ迷いや悩みが全て消えるような気がするんです。



「何か見つかるでしょうか?」


「どうだろうな。それは俺にも分からないが、例え全てが消え去ったとしても、あの地に遺された想いは消えはしないはずだ。この心に遺る想いに終焉はないからな。」



…そうですね。



例え大地が消失しても。


例え大切な人の遺体はなくても。


例え想い出のかけらさえ見付けられないとしても。



心の中に残る想いは決して消えたりしません。



だからこそ。



総魔さんは現実と向き合うために旧アストリア王国の領土に向かうつもりのようでした。



「だったら私も行きます。」



二人きりの旅になってしまったことに対して喜びや切なさなどの複雑な気持ちは感じますが、

今は総魔さんの傍にいられることが一番の幸せだからです。



「私も連れて行ってください。」


「ああ。」



必死に同行を願ってみたことで、

総魔さんは迷うことなく私の手を握りしめてくれました。



「お前は俺が守る。それが悠理と交わした最期の約束だからな。」



…ぁ。



「はいっ!」



…ありがとうございます。



総魔さんは悠理ちゃんと交わした約束を今でも覚えてくれているようでした。



…ちゃんと覚えていてくれたんですね。



総魔さんは以前と何も変わっていません。


私や御堂先輩を想う気持ちは以前と同じように感じられるんです。



「悠理ちゃんのことを覚えてくれていたんですね。」


「当然だ。遺された想いは今でも俺の中にある。例え魂は存在しなくとも託された意志が失われることはない。想いを受け継ぐ者がいる限り、決して失われることはない。」



…はい。


…はいっ!



「行くぞ。」


「はい!」



想いは消えないと力強く宣言してくれた総魔さんが樹海の中に歩みを進めようとしました。


ですがその前にミルクが足元に擦り寄ってきてくれました。



「みゃ~っ♪」



…うんっ。


…そうだよね。



「ミルクも一緒だよ。」



これからもずっとミルクとは一緒です。



「一緒に行こうね♪」



ミルクの体をしっかりと抱き抱えてから総魔さんの隣に並びました。



「まずは東に向かうんですよね?」


「ああ、そうだな。ひとまず東へ向かおう。」


「はい。」



消失したアストリア王国の領土へ向かうために、

私達は樹海から脱出することになりました。


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