与えられた猶予
「俺は竜の牙に協力しない。それだけは永遠に変わらないだろう。」
…永遠に、ですか。
そこまで宣言してしまうのは寂しいと思ってしまうのですが。
竜の牙には協力しないと断言した総魔さんは、
竜崎さんと見つめあいながら別れを告げようとしていました。
「共に行動するつもりはないが、お前達に受けた恩をないがしろにするつもりもない。協力することは出来ないが、竜道寺清隆の始末だけは責任をもって引き受けさせてもらう。」
「…だとしたら、その一戦だけは協力してくれるんだね?」
「いや、協力ではない。俺は俺の意志で竜道寺清隆を始末するだけだ。」
あくまでも竜の牙のためではないという意味でしょうか。
最後の望みを賭けて期待の眼差しを向ける竜崎さんでしたが、
総魔さんは最後まで協力を認めようとはしませんでした。
「俺は俺の思うままに行動する。そしてお前達もお前達の思うように行動すれば良い。」
お互いの進むべき道が別方向だと強調した総魔さんは席を離れてしまいました。
「受けた恩は返す。だが、それでも竜の牙は俺の敵だ。」
…総魔さん。
両親を奪われた憎しみや故郷を奪われた悲しみを瞳にたたえながら、
総魔さんは竜崎さんとの協力を拒絶していました。
「竜の牙を復興したいのであれば好きにしろ。お前達が共和国にとって有益な存在である限りは様子をみる。だが共和国にとって害悪で有ると判断した時は…俺の手で潰すまでだ。」
「それが僕に与えられた猶予なんだね?」
「ああ。お前の思う復興を果たして立ち直れるかどうか?それとも汚名を払拭できないまま狂った組織として滅びを迎えるのか?たどり着く結末はお前自身の手にかかっている。」
「………。」
…難しい、ですよね。
それでも竜崎さんに対して運命の選択肢を宣言してから、
総魔さんは私に振り返りました。




