交渉は決裂
「交渉は決裂だ。」
話し合いを放棄した総魔さんは竜崎さんとの交渉を一方的に打ち切ってから席を立ち上がってしまいました。
「俺は俺の道を行く。そして立ち塞がる敵を全て排除する。」
排除という言葉を強調した総魔さんは、
竜崎さん達に対しても宣戦布告を行うようでした。
「竜の牙も敵の一つだ。」
「…そうか。どうあっても僕達と敵対するつもりなんだね?」
「ああ、そうなるな。」
少し落ち込んだ表情で問い掛ける竜崎さんに対して、
総魔さんは冷ややかな視線を向けていました。
「個人的な恩があるとはいえ、俺は俺の意志を変えるつもりはない。」
「………。」
「俺の進むべき道の先において障害となるのであれば排除するのみだ。それが俺のやり方だからな。」
誰の意志にも従わず。
誰の力にも屈せず。
ただ自分の意志で動くと宣言する総魔さんの言葉を聞いた竜崎さんは、
ひどく落ち込んだ表情で深くため息を吐いていました。
「結局、僕達の努力は無駄だったということか。」
…そうでしょうか?
私はそうは思いません。
多くの仲間を犠牲にしてまで戦争を終戦へと導いた努力が無駄に終わったと考える竜崎さんですが、
そうではないと思います。
…無駄ではありませんよね。
「無駄ではない。」
私の考えを肯定するかのように、
総魔さんは穏やかな声で竜崎さんに語りかけていました。
「お前達はお前達の手で必要な力を手に入れたはずだ。」
「…必要な力?」
「ああ、そうだ。すでに共和国の協力を得ることに成功しているはずだ。俺の力がなくても米倉宗一郎や御堂達の信頼を得た今なら、他に必要な力などないだろう?」
「………。」
再び黙り込んでしまう竜崎さんでしたが、
総魔さんの考えは私も同感です。
だからでしょうか?
「俺がお前達に協力するつもりはないが、共和国がお前達を必要とする限りお前達に攻撃を仕掛けることはしない。それだけは安心して良い。」
総魔さんは猶予を告げていました。
「…それは、どういう…?」
「………。」
意味を問い掛けようとする竜崎さんに、
総魔さんは少しだけ微笑みを見せていました。
「もしもお前達がこれからも竜の牙の再興を目指して戦い続けたいと思うのなら好きにすれば良い。俺にとって竜の牙は潰すべき敵だとしても、共和国がお前達を必要とするのなら無理に争うつもりはないからな。」
「それは…今は敵対しないということかい?」
「ああ、そうなるな。」
共和国の味方とは敵対しないということです。
「竜の牙を潰すかどうかはお前達の結果を見てから考える。そしてお前達が共和国に必要とされる限り、俺がお前達に手をだすつもりはない。」
手出しはしないと宣言する総魔さんが告げる猶予はつまり、
竜の牙と共和国の同盟が存続している限りということです。
「共和国にとっての味方は俺にとっても味方と言えるからな。だからこそ竜の牙に協力するつもりはないが、むやみに争うこともしないと約束する。」
「………。」
協力しない変わりに争うつもりもないと宣言した総魔さんは、
竜崎さんとの話し合いを一方的に終わらせてしまいました。




