精霊を通して
「ひとまず僕のことはもう良いかな?質問があれば答えるけどね。」
「…いや、特に聞くべきことはない。」
何か質問があるかどうかを問い掛ける竜崎さんに対して、
総魔さんは軽く首を左右に振りました。
「竜崎の人間性や思惑は全て把握しているつもりだからな。」
「…だろうね。」
はっきりと断言する総魔さんの言葉を否定することなく、
竜崎さんは小さく頷いてから話を続けました。
「精霊という力を通して、複数の戦場の状況を見ていたきみは僕や御堂君達の戦いの全てを知っているんだったね。」
「………。」
総魔さんは何も言いませんでしたが、
全てを知っていると言った竜崎さんの言葉は真実です。
私の場合は千里の瞳と水晶玉を通して常盤成美さんの状況を知るだけでしたが、総魔さんは違います。
沙織先輩と翔子先輩。
徹さんと琴平愛里さん。
北条先輩に悠理ちゃんとお兄さんと武藤君の精霊を通して。
総魔さんは常に状況を把握していたはずです。
総魔さん自身が意識を失うほどの危険な状況だったのに、
みなさんの生存のために常に情報を集めながら魔力を供給し続けていたからです。
だからこそ常盤成美さんや栗原薫さんやフェイ・ウォルカさんや近藤悠輝さんが経験してきたことも、
乗り越えてきた戦場の全ても把握しているはずです。
…そして。
御堂先輩の想いや戦いも全て把握しているはずです。
それと同時に。
御堂先輩達が戦争の中で関わってきた人達のことも知っているはずです。
…だからきっと。
竜崎さんのことも知っていると思います。
総魔さんは私以上に多くのことを知っているはずでした。
…もしかしたら。
私や竜崎さん以上に多くのことを知っているかもしれません。
だからこそ総魔さんは竜崎さんがどれほど危険な戦場を乗り越えて協力を続けてくれていたのかも知っているはずです。
…竜崎さんのことも把握してるんですよね?
そんなふうに思う私が総魔さんを見つめていると。
「全てと言えるほどではないが、ある程度把握してるのは事実だ。竜崎も含めて、御堂達のこともある程度まで把握している。それがどこまでかを説明するのは難しいが…。」
総魔さんは戦争を見ていたことを素直に認めていました。




