圧縮の有用性
《サイド:天城総魔》
翔子と美春がまだ話をしている頃。
すでに図書室に辿りついていた俺は
目的の書物を幾つか見つけて一人で研究を始めていた。
「圧縮魔術か…。」
今回は翔子の発言によって新たに知った技術を調査するために図書室まで来ている。
美春の助言に従って特殊魔術に分類される魔道書を集めて調査を行っているのだが、
それほど調べることは多くないようだ。
ある程度はすでに翔子から聞いているからだが、
概要は既に理解しているので理論の詳細を調べることが主目的となる。
「重要なのは基礎理論だが…」
圧縮魔術基礎理論と題された魔導書をゆっくりと読み進めていく。
大まかな部分は翔子が話していたことと一致しているようだ。
すでに圧縮魔術の理論は翔子の説明によって理解しているのでいまさら調べる必要はない。
軽く読み進めた内容は翔子の説明とそれほど大差がないように思えるからだ。
「ひとまず、圧縮方法だけを調べれば十分かもしれないな」
すでに理解している概要は軽く目を通すだけで読み飛ばすことにして、
圧縮魔術の習得に必要な記述だけを探していく。
今回は思っていたより簡単にできそうな気がする。
やるべきことさえわかればそれほど難しい内容ではないからだ。
圧縮魔術。
この特殊な魔術理論は基本的に一人につき一つだけ魔術を発動寸前の状態で待機させて長時間維持出来るようになるという裏技のような技術だ。
ある程度の練習を繰り返して上達すれば複数の魔術を同時に維持する事も出来るようだが、
数が増えれば増えるほど調整が難しくなってしまって極端に難易度が高まるらしい。
そのうえ。
魔術の圧縮と維持に失敗すれば自身の中で暴発してしまい。
最悪の場合は死に至る可能性も有り得るようだ。
失敗時の欠点が大きな問題だな。
魔術が発動しないだけなら問題はないが、
暴発による負傷は笑って見過ごせる程度の規模では収まらないだろう。
強力な魔術を圧縮すれば戦闘は有利になるが、
暴発すれば自らが死に至ることになるからだ。
だがそれでも上手く使いこなせれば複数の魔術を同時に展開する事も可能となる。
炎と氷を同時に作り出す事も攻撃と回復を同時に行う事も可能になるからな。
安全面を考慮すれば回復魔術を圧縮しておいて、
有事の際に発動するのが最も有効的な運用方法だろう。
この場合。
回復魔術が暴発しても即死することはない。
魔術そのものの暴走による弊害となるとどのような状況になるのか推測さえできないがよほどのことがない限り行動不能に陥ることはないだろう。
結局のところは使い方次第だ。
利点と欠点を考えた場合。
使用するにあたって危険性は大きいがそれを補えるほどの有効性もある。
それが圧縮魔術の特徴のようだ。
実際に使ってみない事にはどの程度の効果が期待できるのか予想できないものの。
魔術の圧縮という技術そのものは学ぶべき価値が十分にあるだろう。
この理論を応用すれば、翼が更なる進化を遂げられるかもしれない。
圧縮の有用性は十分に期待できる。
その期待を実現するために。
新たな構想を思い浮かべながら、
集めた魔導書を幾つも並べて翼の魔術の理論を構築し直していく。
細部まで突き詰めて実践で使えるようにする為には研究を繰り返すしかないからな。
まずは時間も忘れて研究に没頭することにした。




