次に会うのは
「魔術大会って…どういうこと?」
「これから総魔さんがどうするのかは分かりませんが、おそらく共和国での最後の舞台に挑むための準備を整えると思います。」
「ん?最後の舞台って何なの?」
「分かりませんか?」
「さあ?」
…そうですか。
…簡単なんですけどね。
首を傾げて悩み込む栗原さんに、
そっと耳打ちすることにしました。
「…と…こと…です。」
「あっ!ああ~!!なるほどね~!それは確かに最後の舞台と呼ぶに相応しい結末よね~。」
…はい。
「そっかそっか~。」
私の推測を聞いた栗原さんは満足そうな表情で何度も頷いてからゆっくりと席を立ちました。
「そういうことならもうここで心配する必要はないわね。どうせまた再会出来るんだから、早々にジェノスに向かうことにするわ。」
…あ、はい。
「次に会うのは…。」
「ええ、分かってるわ。グランパレスのどこかで落ち合いましょう。」
…はい。
「その日までお元気で…」
「心配しなくても大丈夫よ。私には世界最強の兄貴がついてくれてるんだから、かすり傷一つ有り得ないわ。」
…あははっ。
…そうですね。
総魔さんのことを兄貴と呼ぶ栗原さんは、
すごく嬉しそうな表情で楽しそうに笑っていました。
「それじゃあ、とりあえずまたね~。」
…はい。
「よろしければ樹海の外までお送りしましょうか?」
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと目印を付けながら進んできたし、竜崎慶太かクイーン辺りが迎えに来てくれそうな気がするし。それに貴女は兄貴の傍から離れられないでしょ?」
「あ、いえ。今でしたらもう…。」
「ダメダメ。兄貴はちょっと目を離した隙に姿を消しかねないからしっかり監視しておいて。」
…あ、はい。
笑顔で断られてしまったことで、
お見送りは諦めるしかありませんでした。
「それではどうかまだしばらくの間は、ここでの出来事を誰にも口外しないようにご協力お願いします。」
「ええ。任せておいて!絶対に誰にも言わないし、そのほうが色々と楽しめそうだしね。」
…ですね。
私のお願いを快く承諾してくれた栗原さんは、
席を立ってから出口に向かって歩きだしました。
「ひとまず次に会えるのは2週間後かしら?」
…あ、はい。
「そうなると思います。」
「それじゃあ、それまでに私も準備を整えておくわね。」
「はい。」
足早に先を急ぐ栗原さんの背中を見送りながら、
改めて栗原さんに一礼しました。
「それではまた…。」
「ええ、それじゃあね。」
静かに見送る私に微笑んでから部屋を出た栗原さんは、
そのまま砦の外に行ってしまいました。




