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THE WORLD  作者: SEASONS
5月7日
3785/4820

依頼の調査結果が

「その…。私もまだ詳しい内容は分かりませんが、総魔さんはここに書かれている病気に関する治療方法を調べているようでした。」


「ドーラ伝染病に関して?」



…はい。



「そうです。」


「そうです…って、まさか誰か感染してる人がいるの?」


「おそらくそうだと思います。」


「おそらくって、どういうことなの?」



…どうと聞かれても困るのですが。



「私も総魔さんもこの病気に関しては何も知りません。ただ、とある事情があって他国に関しての調査を依頼しただけですので、どういう病気が発見されるのかは知らないんです。」


「…と言うことは。それってつまり、アルバニア王国でどういう病気があったのかを調べてたっていうこと?」



…あ、いえ。


…それは違います。



「正確には共和国以外の特定の地域で『治療不可能と判断されるほどの病気が存在していたかどうか?』という調査を依頼していたんです。」


「その依頼の調査結果がドーラ伝染病だったってこと?」



…そうですね。



「そうみたいです。なのでこの病気がどういう病気なのか、どうすれば治療できるのかなどは私や総魔さんにも分かりません。あくまでも依頼した調査に関する結果報告ですので、この病気に関して答えられることは今のところ何もありません。」


「だけど調べてたってことは誰かのために…ってことでしょ?」



…ええ、そうです。



「ある方の病気に関して調べていました。」


「それって誰なの?」


「それは…」



…どうしましょうか。



名前を教えるかどうかで少しだけ悩んでしまいました。



…いずれ知る日は来るんですけど。


…でも、それでも。



まだ病名が確定したわけではないので、

治療に関して確信が持てるまで口外は避けるべきかもしれません。



…もしもこの病気が違っていたら?



総魔さんは『あの人』との約束を果たせなかったことになってしまいます。


だから今はまだ実名を避けたほうが良いと思います。



…総魔さんが目覚めるまで待ったほうが良いかもしれませんね。



「申し訳ありませんが、名前に関しては言えません。」


「どうして?全て教えてくれるんじゃなかったの?」


「…もしもその病気が正解であって、治療方法が確立できるのでしたら名前を言っても良いと思います。ですが、もしも病気が間違っていて、期待ハズレに終わってしまうのなら、今はまだ期待を持つべきではないと思うんです。」


「それってつまり、治療方法が確立するまでは名前を教えられないってこと?」


「はい。そうですね。確実に治療できるという確信が持てるまで、お教えすることは出来ません。」


「そうまで徹底しなければいけない理由があるの?」


「そうすることで叶えられる想いがあるんだと思います。」


「叶えられる想い?」



………。



これ以上の説明は避けたほうが良いかもしれませんね。


色々と疑問を感じる様子の栗原さんには申し訳ないのですが、

今はまだ具体的な内容は言えません。



「このノートは栗原さんが預かっていてください。そしてもしもよろしければ、栗原さんもこの病気の治療方法を考えてもらえないでしょうか。」


「治療方法って…それはまあ良いけど、これって急ぐの?」


「…分かりません。」



現状でどこまで病気が進行しているのかが分からないからです。



「ですが一日も早く治療方法を確立させるべきだとは思っています。」


「…もしも間に合わなかったら?」



………。



「…死亡するってわけね。」



沈黙で答える私を見て、

栗原さんは察してくれたようでした。



「誰を治療しようとしてるのかは知らないけど。この病気の治療方法が確立すれば、その誰かを救えるのね?」


「…どうでしょうか。この調査と病気が一致すればの話ですので、もしも病気が違っていたら調査は振り出しに戻ると思います。」


「まずはそこからなのね。」


「はい。ですがこの病気が正解である可能性は高いと思います。」


「…だとしたら、今は信じて治療方法を考えるしかないってことね。」



…そうですね。



今は信じるしかありません。



「まあ、良いわ。どういう事情があるのかは知らないけど、病気の治療がしたいって言うのなら、私も医師の一人として協力させてもらうわ。」


「すみません。ありがとうございます。」


「別にお礼は良いけど、この魔術が完成すれば天城君にとって大切な人が救えるのね?」


「その可能性はあります。」


「だったら引き受けるわ。天城君には返しても返しきれないくらいの恩があるから、私に協力できることなら何だってするわ。」


「ありがとうございます」


「だからお礼は良いんだってば…。でもまあ、治療方法に関しては任せておいて。」


「はい、よろしくお願いします。」


「ええ!」



栗原さんは快く引き受けてから、

ノートを鞄の中にしまい込みました。


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