ちょっぴり急ぐから
「さて…と。」
軽く周囲を見回してから校門を出た美春さんは、
商店街に向かうために海がある方角へ視線を向けていました。
「深海さんのお店がある商店街はここから南南東の方角だけど。言葉で説明するよりも実際に歩いたほうが早いかもしれないわね。」
…あ、はい。
「お願いします。」
「ええ、良いわよ。ただ…」
…ただ?
一瞬だけ言葉をとぎらせた美春さんは、
何故か校舎側に振り返ってから小さくため息を吐いていました。
「もうすでに9時30分だから、少し急がないと10時を過ぎるかもしれないわ。」
…あうぅ~。
…それはちょっと嬉しくないです。
「ここから商店街って遠いんですか?」
「急げば20分くらいだけど…。かなり頑張っても15分で着けるかどうかというところかしら?」
「15分…ですか。」
「わりと全力疾走に近い勢いで走る必要があるけどね。」
…はぅぅ~。
「頑張ります…。」
「ふふっ。まあ無茶はしないけど、ちょっぴり急ぐからちゃんと着いてきてね。」
「は、はいっ!ちゃんと追い掛けます。」
「ええ。それじゃあ行くわよ。」
「はい!」
…頑張ります!
道案内をしてくれる美春さんと一緒に商店街まで走ることになりました。




