好きだなんて
「大体の事情は知ってるから、深海さんのお店まで案内してあげてもいいわよ。」
…え?
…あ!
…で、でもっ。
優しく微笑みながら話し掛けてくれる美春さんの申し出はすごく嬉しいんですけど。
いつもいつも道案内をしてもらってばかりでものすごく申し訳ない気がしてしまいます。
「そ、その…っ。ご迷惑じゃないですか?」
「ふふっ、別に気にしなくて良いわよ。商店街までなら大した距離じゃないし。」
…そうなのでしょうか?
道も方角も分からないので当然距離も分からないのですが、
それでも美春さんは微笑んだまま私の頭を撫でてくれました。
「特に予定があるわけでもないしね。それに千夏が倒れたままだとどこかに移動するのも面倒だし。たぶん千夏が目覚めるまでには帰ってこれると思うから、商店街までなら案内してあげるわよ。」
「い、良いんですか?」
「呼ぶだけ呼んで、あとはさよならじゃ可哀相だしね。一応、連れてきた責任があるからちゃんと送ってあげるわよ。」
「あ、ありがとうございますっ。」
「ふふっ、別にお礼は良いわよ。それに個人的に成美ちゃんが好きだからこのくらいのことなら苦でも何でもないわ。」
…あ、あぅぅぅ~。
美春さんに好きだなんて言われたら、ちょっぴり照れてしまいます。
…は、恥ずかしいよぅ。
すごく嬉しいんですけど。
やっぱり恥ずかしいです。
「あ、あの…っ、お願いしても…良いですか?」
せっかくのご厚意を断るのは勿体ないのでもう一度だけ甘えてみると。
「ええ、喜んで引き受けるわ。」
美春さんは一切迷わずに即答で引き受けてくれました。
「とりあえず私はいつでも良いけど…。どうする?みんなに挨拶する?」
…あ、はい。
「もう一度挨拶だけしてきますっ。」
「分かったわ。それじゃあ入口で待ってるから準備が出来たら来てね。」
「はいっ!すぐに行きますね。」
学園を離れる前に。
少しだけ美春さんに待ってもらうことにしてから、
もう一度みんなに挨拶をして回ることにしました。




