私の価値は
「米倉美由紀ね~。ってことは、もしかしてこの学園の理事長に就任するってこと?」
「まさか…。さすがにそこまでの権限は私にはないわ。あくまでも私の価値は兵器の研究開発だけでしかないから。」
何気ない疑問を問い掛けた里沙さんに対して、
五十鈴さんは少しだけ淋しそうな表情で微笑みながら質問に答えていました。
「私が受け継いだのは名前だけよ。今でも罪人に違いはないし。自由や権限なんて私には何もないわ。」
自分には何もないと話す五十鈴さんですが、
それでも幸せそうな表情で二人の男性に視線を向けていました。
「私には何もないわ。だけどね。私には私を支えてくれる二人がいるの。」
…それって。
「市村と浦谷がいる。ただそれだけで十分なのよ。」
…やっぱり。
今の五十鈴さんからは初めてお会いした頃のような殺意はどこにもなくて、
ただただ幸せそうな表情で二人の男性に温かな眼差しを向けていました。
「当然だ。俺達は最後まで菜々子ちゃんと一緒だ。」
「これからもずっとな。」
「ええ、そうね。ありがとう。」
「…ふ~ん。そういうことね。」
二人の男性に見守られながら微笑む五十鈴さんを見て、
里沙さんはもう何も言わずに大人しく席に着いていました。




