一体どうやって
「不思議ね…。」
…?
首をかしげる百花さんは、
少しだけ霧華ちゃんのお話を聞かせてくれました。
「あの子は誰にも懐かないし。私や両親でさえ手に負えない面倒な子だと思っていたんだけど。成美ちゃんとは上手くやってるっていう話が私には信じられないのよ。一体どうやってあの子と会話をしているの?」
…え?
…え~っと。
…どうって言うか。
「そんなにすごいことじゃなくて、普通だと思うんですけど…。あ、でも霧華ちゃんにはずっとお馬鹿って言われてるから普通じゃないのかな?で、でも仲が悪いとかそういうことじゃなくて。多分ですけど『甘えてもらってるのかな?』って自分では思ってます。」
「………。嘘でしょ?甘えるとか言われると余計に信じられないんだけど。あの子が自分から進んで誰かに関わることなんて今まで一度もなかったから、成美ちゃんと仲良くしてるって聞いた時には自分の耳を本気で疑ったわ。」
「そ、そこまで言わなくても…。」
「それくらいの驚きだったのよ。あの子の頭の良さは認めるけどね。だけど心を閉ざして誰とも関わろうとしないあの子にどう接すれば良いのかなんて私にはさっぱり分からなかったわ。それなのに、成美ちゃんにはそれが出来たのね。」
…どうなのでしょうか?
「自分では良く分からないんですけど。だけど霧華ちゃんとはこれからもずっとお友達でいたいと思ってます。」
「…そ、そう。そう言ってもらえると助かるわ。私には出来ないけど。成美ちゃんがあの子と仲良くしてくれるのなら私も両親も安心できるし、あの子も喜んでくれるかもしれないしね。」
「い、いえ…そんな…。」
どちらかと言えば私がお願いしたい立場です。
…だけど。
「やっぱり姉妹なんですね♪」
百花さんと霧華ちゃんは仲が悪いと聞いていましたけど。
霧華ちゃんが言うほど百花さんは霧華ちゃんを嫌っているようには思えません。
ちゃんと霧華ちゃんのことを考えているように思えるんです。
「百花さんも霧華ちゃんが好きなんですよね♪」
「さあ?それはどうかしらね…。」
ちょっぴり困った様子の百花さんですが、
本当に仲が悪かったのなら霧華ちゃんのことを私に託そうとはしないはずです。
無理にでも近づけないようにするか、
霧華ちゃんのことを悪く言うはずです。
ですが百花さんはそういうことをしていません。
私と霧華ちゃんの関係に驚いていても、
霧華ちゃんとお友達になることを喜んでくれているように思えるんです。
「本当は霧華ちゃんのことを想ってるんですよね♪」
「…どうかしらね。」
自分でも悩んでいるような仕種で言葉を詰まらせる百花さんですが、
私には何となく分かります。
お姉ちゃんが私にどう接すれば良いのか分からずに思い悩んでいた時期があったことを知っているから。
だから百花さんの気持ちも何となくですが分かるんです。
「霧華ちゃんのことを大切に想っている気持ちは私にも分かります♪」
「…ふふっ。」
素直な気持ちを言葉にしてみると、
百花さんは心の迷いが晴れたかのようにとても穏やかな表情で微笑んでくれました。




