だったら一度
…あれ?
…何だろう?
お家を出てから学園に向かう途中の道で、
何故か私と美春さんはすれ違う人達の注目を集めているようでした。
「あ、あの…?」
「ん?どうしたの?成美ちゃん。」
「あ、いえ…。その…。何となくなんですけど。すごく人に見られてる気がするんですけど、気のせいでしょうか?」
「ああ、そのことね。だから言ったでしょ?あまりにも成美ちゃんが可愛いから、みんな成美ちゃんを見てるのよ。」
「そ、そうなんですか…?」
美春さんに言われてからもう一度、周囲を見渡してみると、
確かに沢山の人達に見らているような気がしてきました。
…あうう~。
…どこか変なのかな?
ちょっぴり気になってしまうのですが、
美春さんの言葉が真実なら私が可愛いから見られているらしいです。
…でも~。
…そんなことないよね?
絶対の絶対に美春さんのほうが素敵です。
それだけは自信を持って断言できます。
…だから気のせいだよね?
見られているのは私ではなくて美春さんです。
そうとしか思えません。
「私じゃなくて美春さんを見てるんじゃないですか?」
「だったら一度、離れてみる?」
…え?
「別々に歩けばどっちが正解かはすぐに分かると思うわよ?」
「ぁ、ぃぇ…。それは、その…。」
あまり知らない道を一人で歩くのは怖いです。
美春さんがいてくれないと怖くて淋しくて不安になってしまいます。
…だから。
「美春さんと一緒にいたいです。」
「そう?まあ、私はどっちでも良いけどね。」
素直な気持ちを伝えてみると。
美春さんはそれ以上何も言わずに、
私を先導しながら学園に向かって歩き続けてくれました。




