自慢の娘よ
…あうぅぅ~。
…もう時間だよ~。
もうすぐ美春さんが迎えに来てくれる時間になってしまいます。
「ど、ど、ど、どうしよう!?あとは何を用意すれば良いのかなっ?」
慌てる必要はないと分かっているのですが、
それでも焦ってしまいました。
「ね、ねえ、お母さんっ!」
「慌てなくても大丈夫よ。このまま少しだけじっとしていてね。」
…う、うん。
時間を気にして焦る私に微笑んでから、
お母さんは翔子さんのリボンを使って私の髪を結んでくれました。
「ふふっ。本当に成美は可愛いわね。」
…うぅ~?
…そうかな~?
「これならどこに行っても恥ずかしくないわ。お母さんの自慢の娘よ。」
…あう~。
自分では分かりませんが、
お母さんは何度も何度も褒めてくれました。
ただ、当たり前のように褒めてくれるお母さんの優しさがちょっぴり照れくさかったりします。
…褒められると恥ずかしいよ~。
今まで褒められた経験があまりないので、
どう答えれば良いのかが分かりません。
…はう~。
「これでもう準備は良いの?」
「そうね~。あとはいつもの鞄とお財布を忘れないようにするのよ。」
…あ、うん。
「それは大丈夫だよ。」
お出かけする時は必ず持っていくように心掛けています。
優奈さんの鞄とお姉ちゃんと翔子さんのお財布だけは、
何があっても絶対に忘れません。
「ちゃんと持っていくよ。」
「それじゃあ準備は万端ね。あとはケーキを持っていくのを忘れちゃダメよ。」
…あっ!
「うん、そうだね。」
もうすでに忘れかけていました。
せっかく昨日頑張ったのに。
このまま持っていくのを忘れてしまったら、
昨日の努力が全て無駄になってしまいます。
「ちゃんと持っていくね。」
「ええ。それじゃあ、お友達が迎えに来てくれる前に鞄をとってきなさい。」
「うん!行ってくる~。」
今はまだ私のお部屋にある鞄とお財布を取りに行くために、
一旦お部屋に戻ることにしました。




